君と戦車
真島正人
君は遅れてやってきたんだね
背中に大きな月を背負って
いい匂いがするな
樫の匂いだ
子供のころから
これを嗅ぎたかったな
鋭い爪で
僕の肌を刺したら
波みたいに後悔しようね
ゆっくり
ゆっくりと
君は子供だから
君の好きだった戦車が
今は君に砲台を向けているね
大きな
大きな
とても怖いね
君が悪いんだよ
でもいいんだ僕は
誰だって同じだから
君の白いシャツが破けているよ
ほら
はじのほうさ
そんな些細なことと
何も変わらない気持ち
君は遅れてやってきたんだね
洗ったばかりのスニーカーと
花の模様の
カチューシャ
君は漂白されているんだね
いい匂いだよ
何も悪くはないよ
本当に白い人なんているのかなって
いつも疑問なんだ
ゆったりと
ゆったりと
寝そべってごらん
夜風が吹いている
君の好きだった戦車は
今だってあんなにも光っていて
かわいくて
きれいだね
勇ましいよ
君はそれを
否定しきっちゃうことはないんだ
君に向けられた砲台は
絶対に
発射するけれど
だからちゃんと見ておこうよ
君の戦車だよ
君の戦車なんだよ
人の罪ってなんだ
人の罪ってなんだ
人の罪ってなんだ
人の罪ってなーんだ