おまえの気まぐれさは 朝霧のようなもの
昼がくれば晴れて 夜がくれば澄み渡る
古代ローマの少年王ほど 傲慢ではないが
猫なんて 可愛いらしい無邪気さでもない
濡れた衣服を どうすることも出来ずに
太陽が怖い と日陰に駆け込みながら
喉が渇き切ったときの 一滴の唾液の甘さを味わっている
大量の薔薇をかき抱き これは
華やかで賑やかな 年中止まないパーティーの装飾だと踊り
傍らで孤独に寄り添い ツルゲーネフやプーシキンの詩を歌う
例えば そんなものだ
・
よく逃げ出しもせず 堂々と立っているがね
足の甲をよく 見てみろ
大地に打ち付けた杭に破れた 傷口が流血で染まっている
そんな繊細さで 愚鈍を演じて何になる?
何になるっていうんだ?
素直に嫌々をしていた 過去のおまえに出会い直したいね
そして言ってやりたい
中毒と陶酔は 別物だということを
・
ワインを飲むたびに 息を吸い込むたびに
少しずつ腹に 溜まっていく
そのうちに 爪先から髪の先まで異常値を示して
音楽を聴く耳を失くす 絵画を愉しむ心を失くす
そして何が 自分の幸福かも知らなくなる
その深刻さは 計り知れない
何かが滅びるとき それに纏わるすべてが滅びる
その意味が 理解できないなら
過剰に望むな 駄目にする
・
おまえはね
今 少し 分からなくなっているだけだよ
何が 何だか
それももうすぐ 思い出せるはずだ
それまでは 口癖にしていなさい
「なにも なんでも ない」って
みじかくて いい やすい 単語だろう?
わかったね なまり