星の植民地(井上靖に捧ぐ)
吉岡ペペロ
星が散らばっている
日中の空虚な明るさが
夜空の星々に統治されている
瓦礫いがい見当たらなかった
それでも人間たちの立てる煙りが
そこかしこからすうっと上がっている
ぼくは復員したばかりだった
肉汁を食い金を払い
酒であたたまった体を引きずり
ぼくは露店を逃げだした
逃げだした?
ぼくは金を払い露店を出ただけだ
戦中の記憶がまだ
生きながらえるぼくを捕らえていた
酩酊した足をふらつかせ空を仰いだ
星々が夜空に散っている
それはまるで
収集のつかないひとつの狂乱だった
その狂乱に
射抜かれていたいと思った
夜空の星々に統治されていたかった