星の植民地(井上靖に捧ぐ)
吉岡ペペロ

星が散らばっている

日中の空虚な明るさが

夜空の星々に統治されている

瓦礫いがい見当たらなかった

それでも人間たちの立てる煙りが

そこかしこからすうっと上がっている

ぼくは復員したばかりだった

肉汁を食い金を払い

酒であたたまった体を引きずり

ぼくは露店を逃げだした

逃げだした?

ぼくは金を払い露店を出ただけだ

戦中の記憶がまだ

生きながらえるぼくを捕らえていた

酩酊した足をふらつかせ空を仰いだ

星々が夜空に散っている

それはまるで

収集のつかないひとつの狂乱だった

その狂乱に

射抜かれていたいと思った

夜空の星々に統治されていたかった


自由詩 星の植民地(井上靖に捧ぐ) Copyright 吉岡ペペロ 2010-02-14 10:26:49
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