街を歩いた日
番田 

車が水しぶきを上げて通りを走る
赤い車は人の歩く速さで流れ
水色の車はスピードを上げてカーブを曲がる
子供が声を上げる街の広場には
濡れたTシャツを振り乱して微笑んでいる子もいる
歩く人の横切ろうとする道に止まっている

僕は茶褐色のパンをほおばっている
クリーム色に見えるそのパンは小麦の味がするわけでもなく
皮にいくつもの凹凸をめぐらして置かれている
小さな店頭には女たちの目を引く色のついた飴がのっていて
数えるほどのコインの入った小袋も木箱の中に収まっている
透明なようなリズムがそこにはあって 窓のガラスには群れをなした水滴がついていた
水たまりの照り返しに窓の外に手をかざすけれど
指先に一本の筆を持っているわけでもなく
子供たちのように鮮明な絵を鮮やかに描くこともない

僕はそんな色を頭の中の紙に描いて歩いていく
地面に模様をなしたひとつひとつの小石をさけながら 家に進む
その先には 沈む街を落ちていく太陽があることだろう


自由詩 街を歩いた日 Copyright 番田  2010-02-12 01:28:14
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