氷の犬
月乃助


翔けだした 
雷鳥さえも追いつきはしない
億年の過ぎ去った
海峡の、氷河の流れに
止められない想いを抱きしめては、
巨きな犬の背にまたがり

髪をふりみだし
人のすがたなどでなく
太古の神のようなおそろしさで、白く
陽の光りにひとつに なる

氷にとざされた世界
いつかたどり着く先に
心をよせる
会いたくなる衝動を解き放ちながら
疾駆する

病んだような
優しさを拭い落としては
原始のものの強さで
風になる
Run

粉雪をとばし
駆けなさい、それが許される今
犬の背にしがみつき
どこまでも走っていく
明日をてらす思いに胸をふくらませ
氷の海を

樹氷の白い陽炎を
蜃気楼のようにみさだめ
陽に輝く月をめざして 
なにもおそれることなどない
さらけ出した、気持ちを
あるがままに 
責められるままに

氷に閉じ込められていた
ながいあいだ
I said nothing to the frozen straight.
そこが海だったなんて思い出しようもない
ただ、手に入れたものを大事にしながら
犬神のように駆け去る

離れては、はるか
銀嶺の山脈をぬき去り
息をもつけぬ その速さに
目まいもせずに
一点を見つめながら
つきすすめ





自由詩 氷の犬 Copyright 月乃助 2010-02-10 07:32:47
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