残虐詩集 独善編
真島正人
1
そして
と
呼ばれている接続詞に
つかの間
休息を与えられ
安堵して
母親の洗った
布団に
潜り込み
今日1日の艶やかさを
昨日と
比べることが出来ない
雪が溶けて
新緑が
現れ
僕は
もう少し
そして
すがりつく
接続詞の
指し示す、夜明けに
2
貝の殻の中に
海の記憶
僕の胸の中に
校庭の記憶
雨が降った朝に
トーストを焼いた
自分の手つきの記憶
も
幾度も
トーストを
焼いて食べたので
皺の数は
違っている
それらすべてがかさなり
靄のような
思い出ができる
3
飲むことに疲れ
音楽にも疲れ
誰か
亡霊になってでてこないかと
不謹慎に考え
それからあとで
手紙を書いた
長い長い手紙
手紙を時間が
連れ去って
粉々の分子に解いてくれることを
学びながら
僕は
怯えて
震える
泣き出す
部屋の入り口には
旅行鞄を手に
入りあぐねている
亡霊
が
いる
こんなにも
君と話が
したかった
4
雨と
風と
火に
かこまれたあとで
夜の校庭のプールで
泳いだ
水泳パンツが
水に濡れて
性器に張り付いていた
でも僕は
不快を感じなかった
そんな日も
もう
遠い
5
岬までやってきて
諦めて
踏みつけ道だけを残して
いまだ解けない謎の
扱いに
悩みながら
作り上げられた
月の色に
戸惑って
しゃがみこんで
ゆったりと眠ると
すべてが流れてゆく