うまくいきてる
あぐり


「ほんとの自分は」っていう人が苦手です
そんなものはペルソナを知らないだけにすぎなくて
だからって知ってることはなにもそんなに偉くない

「あいしてる」って声高にいう人が苦手です
そう思いながらずっと
あいしてるって叫んでいる私をあいしてくれたあなたをあいしてる

あからさまに差し出される不幸も
あからさまに渡される賞賛も
ぜんぶぜんぶ、不格好だと思う
もっとうまくいきてほしい
もっとうまくいきたい
そんなこと、考えながらも私は、
やっぱり自分が小狡く生きている気がしているんだけど、どうですか

ずうっと部屋から出てこないあの子に
私はなんにもできない
そういう無力感はすごく
自分勝手な汚いものに思えているんだけど
それをあなたにこぼす私は
やっぱりうまくいきたいんだと思う

「あいしてる」って声高にいう人が苦手です
そう思っていたのは
あいしてるっていうその言葉を私が知らなかったから
あなたが一度だけ言ってくれたときに
好きじゃ足りないって言ってくれたときに
いっぱいいっぱいあいしてるっていいたくなった
ほんとの自分はそんなことは怖くて恥ずかしかったのかもしれないって
いつでもあなたがそばにいてくれるなんて保証はないからって
逃げ道を用意している自分は
やっぱりうまくいきたいんだと思う

うまくいきることのなにがわるいの?
そう言い放つ私はなんだか
いつもいつも空を見上げては消えてしまいたくなっている
うまくいきてるひとを
たぶんほんとは見つけたくない



自由詩 うまくいきてる Copyright あぐり 2010-02-09 23:20:19
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