「スカッとしたい！」

ただそれだけのこと


年上同僚と上司からの絶え間ない
ツートップなセクハラ発言
尻はなでくりまわされ

後輩はクレームばかり持ち帰るから
年々増えていくお肌のしわ


バレンタインにうつつをぬかせる
オフィスレディたち

恋バナに花を咲かせているが
参加できない私はデスクに伏せっていた

顔を上げれば書類の山で
埋もれてしまった退職願いは行方知れず


本職の役目を果たせない携帯をいじれば
文字の予測変換なんて
どれも攻撃的なものに辿りつく

ふるえる
握りこぶしの隙間から
静電気がピリピリと髪を逆立て

爆発した

ここはとあるオフィスのマウンド

私はモハメド・アリ

対戦相手は後を絶えない

制限時間はタイムカードを差し込むまで

延長なんていらない

開始の合図が鳴れば
一撃ノックアウトで決めてやる

女だからってなめんな、と
レディース顔負けのバカやろう

しみったれた顔面に見舞う

爽やか笑顔の右ストレート