冬のからだ
nonya


電線を泣かせるのは
木枯らしだ
冬のからだの
声だ

何も掴めないのは
街路樹だ
冬のからだの
手だ

キシキシと縮こまった
エンジンを震わせて
登り坂を這っているのは
冬のからだの
背中だ

生臭い排気ガスや
肌色のクラクションと一緒に
冬のからだから
不本意にも滲み出すのは
春っぽい汗だ

春っぽい汗が
冬のからだのあちこちから
少し柔らかくなった空へ向けて
立ち昇っていくのを
なす術もなく眺めるのは
好きだ

陽だまりで膨らんでいるのは
猫だ
冬のからだの
欠伸だ



自由詩 冬のからだ Copyright nonya 2010-02-09 19:22:36
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