RPG
音遥

気が付いたら、朝だった。


いつ眠ってしまったのか、全く覚えていない。
最近はいつもそうだ。
夜遅くまで起きていて、昼過ぎまで眠っている。


何もすることが無い。
窓の外を見ると、今日も雨だった。


だから僕は、どこにも行かない。
ここで雨がやむのを待っている。
これだけ雨が降っていたら、この間もらった花にも水をあげないですむだろう。
花は、見ていると心が落ち着かないから外に置いてある。
風で倒れたりしていないだろうか。
カーテンを開けるのも面倒だから、忘れることにした。


時計は午後1時を指している。
僕にしたら早く起きたほうだな。
久しぶりにゲームでもやろう。


そういえば、今日は何日だっけ?
カレンダーも無いから分からない。
テレビの右下には12月14日と書いてあるが、合っているかどうかも分からない。
一度だって、この時計を合わせたことはない。


ゲームの中で、人が死ぬ。
ここでは何をやっても罪になることは無い。
殺した数が多いほど、僕は英雄になれる。


でも、それがどうした?
英雄になったところで、誰が喜んでくれる?
味方は僕を崇め、敵は僕を恐れる。




幸せになれる人は、どこにもいなかった。




あいつは喜んでくれるだろうか。
あの人はどう思っているだろうか。
あの子は、覚えているだろうか。


僕が存在していることを。
ここにいることを。
22年と何ヶ月か前、僕が生まれたことを。


いつだって、ここには僕がいた。
僕が生まれてから、僕がいなかったことは一度も無い。
なのに、どうしてこんなにも不安なのか。
僕は、どんな風に映っているのか。
僕には見ることはできない。
僕は、どうして生きているのか。
僕には知ることは出来ない。


ロールプレイングゲームとは、ワケが違う。
経験値を貯めたら、レベルが上がるわけではない。


だけど、得られる物もあった。
信じられる物が出来た。




ふと、外が心配になった。
あの子はあの場所にいるだろうか。




気が付いたら、雨は小雨になっていた。
傘はもう、いらないかもしれない。


今日は、僕が得意なオムライスを作ろう。
部屋干しかもしれないけれど、洗濯もしよう。
洗い物もしなければいけないな。




こうやって、いつもの一日が始まる。
今日はもうすぐ、晴れそうだ。


自由詩 RPG Copyright 音遥 2010-02-09 18:52:29
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