春が目覚めれば
窓枠


大好きなあの子が笑っているとき
ぼくは空気になった


冷たいアスファルトの上
共有する呼吸を知った

ひとつになって
やわらかくなって

ぼくらの心臓はまるくなる


おじいさんになって
おばあさんになって
せなかもまるまって

ながい冬が空へと帰っていく

さよならをして

満開の枝垂れ桜を見上げれば
ぼくの頭も垂れていく


大好きなあの子が泣いていた
ぼくがあまりにも
しわしわだからだろうか

大好きなあの子は泣いている
ぼくは空へは帰らないのだと

土になった


孫たちと戯れて
成長する足跡を見守って
月日を重ねれば

ぼくは物知りになる


いつかあの子に聞かせてやろう
大好きなあの子にうたってやろう


ながい冬が空へと
 帰っていくころに



自由詩 春が目覚めれば Copyright 窓枠 2010-02-09 16:57:27
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