短縮8
アマメ庵

君に電話をかけるのは簡単だ
『8』、『コール』の順にプッシュする
それだけ

いつか 君が好きだと言った8
君と知り合い
業務主任は8から1に出世した

あの頃の二人が
毎日 何を話して
毎日 何を笑いあったのか
わからない

君と過ごした一年間
ぼくの薄っぺらな23年は
語り尽くされてしまったのか

言葉が継げなくなると
煙草を吸わない僕は
溜め息ばかりを吐き出した

液晶画面に浮かぶ8
君の名前
88
近所のタクシー会社が現れる

ぼくの言葉は
もう君の笑顔を取り戻すことができないのか

窓ガラスに
液晶画面が青く照らす僕
笑えよと 微笑みかけたつもりが
恐い顔のままだ

気がつかない間に
画面には8が一杯

今度は フンと笑う
いつもの癖で 6度も終話ボタンを押し
携帯電話を閉じる

何故 何度も終話ボタンを押すのか 君が聞いた
いつも6度押すことを 君が見つけた


君の名前

88
やまとタクシー

また8が一杯になって
終話を6度
そして画面を閉じる

おやすみ


自由詩 短縮8 Copyright アマメ庵 2010-02-07 12:34:37
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