ホーム・スウィートホーム
……とある蛙


大きな河がある。
河原の茂み越しに夕日が沈む
大きな赤い夕日が沈む
川沿いの巨大な倉庫の
グレーのシルエットを引きずりながら

大きな河がある。
河原の水際にホームレスのホーム
ホームレスにホームがあるのだ
住所表示のないホーム
偉いさんの知らないホーム

ホームは皆ブルーのシートで覆われている
覆われているのではなくビニールの壁の家
骨格は廃材 屋根はアクリル板
出入口は玄関と呼ばれ
開閉自在の扉で施錠できる

居住空間である。

電気も使える。東電でなく盗電だが、
(立派な刑法犯だー電気窃盗罪))
テレビだってステレオだって中古品だがきちんとある。
(立派な刑法犯だ−占有離脱物横領罪)

ホームレスに音楽を聴く自由はあるのか
無い。音楽は公共性のあるもんだ
ホームレスに公共性は無い。
(奴らはいろいろ犯罪者だ)
とお偉いさんは言う。
(この程度の犯罪はかわいいものだと ホントはお偉いさんほくそ笑む)

ホームレスを生んだのが
誰かを考えもしないし、
同情の報道 報道のどうぞー

大きな河がある。
河原の茂み越しに蠢く人が見える。
彼らの住む場所の住所は無いのだ。
住所は無くとも郵便は届く
郵便はほーむであれば居所でも届けるのだ

ホームレスにホームはある。
そのホームはお偉いさんにとってホームではない。
住んでいるのではなく

そこに いる のだ

ただいるのだ。

ただいるだけの存在は
人間ではないと
お偉いさんは言うのだろうか。

ホームレスのホームはホームではない。

それが法律だ。


自由詩 ホーム・スウィートホーム Copyright ……とある蛙 2010-02-06 14:15:15
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