肥えていく私の、ウソとホント
窓枠

いやになっちゃうわ

恋人と別れた後の帰宅途中
立ち寄ったブックストアで買い漁る
ファッション雑誌と少女漫画
恋占いの本だけ
あいだで隠すようにして

花が咲き散らばる
そんな一面なんか
私の出会いにない

今よりお洒落を気にすれば
何百回と浮かんだ呟きに
私に釣り合う御仁など
はたしているのだろうか
と悶々している

家でくつろげれば
愚痴などを散らかしてしまい
冷めたコンビニ弁当を食しても
私はなんにも満たされない

いつもより音量を上げた
ありきたりなラブソング
サビもいかずに電源オフ

扉を叩くのはお隣さんの苦情
恋が芽生える予兆もなく
よそよそしい距離感
たった一言詫びるだけで
ひょんな出会いも過ぎ去る
けだるさを残し

すぐさま爆音で轟かす
ヘヴィメタルな愛情表現
お隣さんはシャウトがお上手で
そのうちデスボイスなんかも
会得してしまうのだろうね

さあ 行っておいで
投げかけた言葉の先
般若の顔を期待して待つ
健気な少女みたく

今夜は眠れそうにない
酒と煙草をついばみながら
テーブル向かいのお隣さんに
ぶつけるクエスチョンマーク
(連打して)

彼も良い歳なのに独り身で
退屈そうに泳がす瞳を捕まえたら
ちょいと誘ってみりゃさんせ

呂律が回らなくなるころ
冗談めかしてさようなら

ドアノブに手をかける
彼の背中は寂しそうで
引き留めてあげたいが
口には出してあげない

今日が終われば
私は出会いを探さねばいかん
寂しがり屋のうさぎちゃんで

ため息零しゃあ
どこかに落ちてはないものか
お隣さんは今頃どうしてるのか

本当にね
きゆうと鳴いてしまいたい


自由詩 肥えていく私の、ウソとホント Copyright 窓枠 2010-02-05 20:54:35
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