そんな神様だったなら
靜ト
その神様は
ちっとも偉大じゃなく
小柄で、痩せた手足をしていて
けれども表情は生き生きとして
老人の顔をした少年のよう
優しく、時々いたずらっぽく微笑み
白い雲と暖かい日差しとそよ風とチョコレートが大好きなのだ
時々雲の合間から見える
人間の人生模様を恐る恐る覗き
あるときは感動に涙し
あるときは拍手喝采し
あるときはくすくす笑い
あるときは自分のことのように幸せな気持ちになる
時折見えるのは祈る人々だ
彼はそれに動揺し、困惑する
自分には願いを叶える力などないと
また時折見えるのは戦争だ
殺しあい憎しみあい
時には彼への信仰のためにおこる殺戮に
彼は深く深く悲しみ
何もできない自分の無力さに
沢山の涙を流す
それはこぼれ落ち、海ほどにも広がる
そしてすべての自分の子供達が
いつしか必ず
互いに慈しみ、理解し、愛することが出来る日が来ることを
毎日毎日祈るのだ
神様の祈る手は
強く組まれ、小さくふるえる
そんな神様だったなら
―もしどうしてもいるのだと彼らがいうのなら―
そんな神様だったなら
私は許そう
あの日、奪われた沢山の命を助けてくれなかったことを
私は希望をかけよう
いつか、晴れ渡る空に全ての人が幸福を唄えると
私は愛そう
もし
そんな神様だったなら