Born to Win [snow melody]
プテラノドン

先週の土曜日。酔っ払ったTが言った。

「この前俺、女と寝ている時、高校の頃に皆と
錦鯉を盗みに行った事とか思い出したら泣けたわ。」

どちらの方が幸せかはまだ分からない。でも、
今日みたいに雪が降るたびに思い出す事があるー。

高校の帰り道。陽の当たらない林道は夕方になっても凍結していて、
僕らはそこで、ブレザーをぐしょぐしょに濡らしズボンを擦り切らせ、
身体中あざだらけになりながら、誰が一番面白く自転車で転ぶかを競った。
中でも、後ろに友人を乗せて手放しのままノーブレーキでやってきTが
僕らの予想を裏切るように、すんでのところで飛び降りて
荷台に残した友人を林に突っ込ませたのを見届けた僕らは、
世界をふっ切れた気がして、地べたを転がると同時に、その体温で
解けていく地面を感じながら笑い続けた。
そして多分、明日その道は凍っているはずで、
これから先どんな歳月に照らされても、時が過ぎようとも
解かすことはできない。



自由詩 Born to Win [snow melody] Copyright プテラノドン 2010-02-02 02:10:03
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