影の孤児院
智鶴

街の灯がまた今日を弔うように
一つ、また一つと灯り
夕景は影を朧に消していく
名残惜しそうに街が死んでゆく

薄暗いベンチの隅に捨てられた
誰かの指のような子供の笑い声

今日も死ぬ前に許されてしまった
明日もまたきっと
流されて渦を巻く
枯れた声の烏が夕闇へ帰る
僕の影は既に帰路を見失った

セピア色の空
モノクロームの公園が侘しい
煙草の煙が灰の景色に溶けて
死にたがる僕を笑う
お前は不幸だと言う

誰もいない景色の中に
影だけが映る
生きる術を知らない子供が
死ぬ術を知らない僕を笑う
行くあてなど無い癖に
僕を哀れむように泣いている

幻が消えたら
夜が来る

届かないように小さな声で
世界を詰ってみる
虚ろな目で

影の子供たちは
もういなくなって
何処に帰ってしまったんだろう
僕は何処に帰るんだろう

煙草の灰が風に散らされて
煙が視界を薄く覆っていた

暮れていく


自由詩 影の孤児院 Copyright 智鶴 2010-01-30 02:46:31
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