暗闇
アンテ


遠いかなたに
かすかに見える光
暗闇のなかを
光源をめざして歩きつづける
つぎの一歩を踏み出したとたん
大きな穴にはまってそれきりかもしれない
とつぜんぷっつりと
光が途絶えてしまうかもしれない
それでも
暗闇にうずくまったままよりはましだと
自分に言い聞かせる
おい 足を止めるんじゃない
進みつづけるんだ
光は弱々しく
どれだけ離れているか想像もつかない
暗闇のなか
穴を怖れてうずくまってしまった人たちが
きっとたくさんいるのだろう
おなじくらいたくさんの人たちが
今この瞬間も
光をめざして歩きつづけているのだろう
踏みしめた足もとで
ごくまれに
地面とは異なる質感のものが潰れる
声のようなものが聞こえることもある
けれどけっして立ち止まったりはしない
胸を張って
わき目もふらずに歩きながら
そのくせ
一歩ごとに
踏み出した足が地面に着くまで
とても長い
とても長い




自由詩 暗闇 Copyright アンテ 2004-09-25 02:17:35
notebook Home