モナリザたちの休日
小川 葉

 
 
モナリザは
あらゆる角度から
私たちを見ていた

美術の時間
絵の上手下手に関わらず
私たちが絵を書いてるその時も
わけへだてなく
等しい目で

廃校になった校舎の
あの美術室はもうない
モナリザの視線も
今思えばやさしくて
あたたかかった

雪に埋もれた
校舎跡に
同級生が集まった
みんな
いい歳になって

たしかこの辺だったねと
みんなでモナリザのポーズする
あらゆる角度から
私たちを見てくれていた
モナリザになって

勝ち組も
負け組も
わけへだてなく
あの頃に戻っている
等しい目で
見つめてくれた
憎めなくて大好きな
モナリザたち

明日から仕事だ
地元で働く彼が言う
今夜東京に帰るわ
標準語で彼女が言う
僕も明日仙台へ

みなそれぞれの
モナリザの顔に
帰っていく
 
 


自由詩 モナリザたちの休日 Copyright 小川 葉 2010-01-20 03:06:07
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