地層
あ。

きみのひらがなにぼくの声を重ねて
地層みたいなしま模様になって
それはありふれたメロディーで
すき間にもぐりこむ小さな虫ですら
小気味良いアクセントにしかならなくて


さっき港を出発した観光船が
ぼおっと抜けるような音を大気に溶かす
太い振動がしんなりと埋め込まれてゆき
不規則な波形を描きながら通り過ぎる
もしも海賊なんかが現れたりしたら
ざわついた色味が加えられるのかもしれない
そんなことはそうそうないので
今日も穏やかで美しい層がひとつ出来る


ぼくの世界はとてもちっぽけで
神様の爪先にだって届きやしない
ちっぽけな世界にちっぽけな地層があって
ぼくの足の下にも
ぼくの頭の上にも
ぼくの胸の中にも
幾重にも幾重にも折り重なって
見えないそれはきっと例えようもないほど美しく


ちっぽけな世界にメロディーを
永遠に続く穏やかな波形を
語り継がれてきた歴史に敬礼を
きみに誓った愛を
ぼくに誓った愛を
どこまでも終わらない愛を
積み重ねてゆく未来を



自由詩 地層 Copyright あ。 2010-01-18 22:01:59
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