そして雨が降りましたほんの少し
ソノタ

そして雨が降りましたほんの少し
風にちって
睫毛も濡れないくらいだったけれど
指先を針で刺したような気分で歩いた
すごくひとり
どこまでも滲むくせにまざりたがらない
こんなからだ

「わたしにはもう腕がないのであの人を抱きしめられない」
なにもいっしょに持てないのなら
セックスをしようよ
ほとんど神聖といえるくらいの快感でしかない
だって子どもはうまれない
ピンク色したふわふわの
綿菓子みたいな次元のこと
束ねて放った
手放しのままの朝日を横目に

薄い影に足踏みする紫
白く濁った空みたいな指
見たいものしか見えない目と
言葉を忘れたくちびる
わたしは魚を飼っている内腿を撫でる
「おいていかないで」


交差点に差しかかったけれど交差点という
言葉が嫌いなので渡らない
金屑川は緑色になる夏になると
薄青色に乾いた亀たちがいたりして
それらはどんな準備もしていないし
うつくしいという理由でうつくしい


水色のひよこは育たないよっていわれたけれど
大きくなったんだにわとりっていうなんだかべつの生き物みたいに


自由詩 そして雨が降りましたほんの少し Copyright ソノタ 2010-01-13 10:56:21
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