ぼくは、父親の名前に格別思い入れなどなかったが、ぼくが名付けたミドリガメの名前には少しだけ特別な感情が残った。
(一条「ミドリガメと父親」)
+++
公園にはいつも子供が溢れている。カモン、カモンと鴎は空を飛び交っている。冬の公園は寒くて、組んだ足に乗せたノート・パソコンの温みが心地良いよねと呟く彼の隣であたしはドトールのコーヒーをすすりながら湯気の向う越しに半袖短パンの男子たちやそいつらを軽くいなすキラキラした髪留めとヒラヒラしたスカートで闊歩する女子たちを眺めている。
――いかがわしい名前のサイトなんやけど、このサイトで「殿堂入り」になっとる一条さんって人の作品がマジおもろいけんさ、ちょっ読んでみ!
滑り台ブランコ砂場シーソー鉄棒ジャングルジム。子供らは公園いっぱいに広がっている。黒い肌、白い肌、黄色い肌。滑り台から降りる女子のスカートが捲れるのを見逃さないままブランコから飛び降りてずっこける男子を砂場で笑っているキラキラした女子ども、そいつら横目にシーソーで好きな女子の話題に耽る茶色いシャツと青いシャツの男子二人を鉄棒に寄りかかってませた噂話に耽るミニスカの群れを確認していると、彼からノート・パソコンを押し付けられた。「文学極道」っていかがわしいサイト名だねって言ったら「さっき言ったやん」って返された。画面上に一条さんって人の作品名が並ぶ、
+++
05-01-26 鴎(かもめ)
05-02-22 ふっとう
05-03-15 出産
05-03-24 見物
05-03-29 ニンゲン
05-04-21 ベロベロ
05-04-28 マクドナルドは休日
05-05-16 ミドリガメと父親
05-05-27 安息
05-06-16 祖父はわっかにつかまって
05-08-11 ユーフラテス
05-08-16 ローリング・ストーンズ
05-08-30 サマーソフト
05-09-09 あほみたいに知らない
05-09-22 コカコーラ
05-10-12 黒い豆
05-10-19 おしっこ
05-11-02 フルーツ
05-11-09 血みどろ臓物
05-12-12 改札
05-12-28 フィナーレ
06-01-10 nagaitegami
06-01-30 淀川22歳
06-03-09 I can’t speak fucking Japanese.
06-03-18 チャンス
06-03-30 かららまりり
06-04-11 サーカス
06-05-04 先生の道具
06-05-19 メアリー、メアリー、しっかりつかまって
06-06-06 バスケット・ダイアリー
06-06-21 helpless
06-07-11 小さい有色のボール
06-07-21 わたしは今日迎えます
07-01-11 町子さん(巴里子)
07-01-16 朗読(巴里子)
07-02-09 Save me, SOS
07-02-21 母のカルテ
07-03-01 milk cow blues
07-03-09 川島
07-04-06 正方形
07-04-11 こっぱみじんこ パート2
07-05-01 大根
07-06-26 ポエムとyumica
07-07-17 john
07-07-23 I have two beds.
07-11-28 カット、コピー(鈴木)
07-12-28 Miss World 2007(鈴木)
08-01-18 (無題)(もうすぐ。)(鈴木)
08-02-20 (無題)(テレビ局の人間が)(鈴木)
08-04-04 (無題)(ぼくがバスの運転手だったら、)(鈴木)
08-04-17 (無題)(丸の内のOLさんが)(鈴木)
09-01-07 ホーキンスさん
09-01-14 ラオ君
09-02-02 愛と歩いて、町を行く
09-02-10 (無題)(2月には雨の降るように、)
09-03-06 RJ45、鈴木、
09-03-30 「一条さんがやってくるわよ」
09-04-06 詩 In C(debaser)
09-05-13 (無題)(帰ってこない、と妻は言うので、)(debaser)
09-05-27 脈拍と海とケーキ(debaser)
09-06-26 god is may co-pilot(debaser)
09-07-14 帰郷(debaser)
09-07-30 (無題)(国道沿いの吉野家の看板に)(debaser)
09-08-22 SSDD(debaser)
09-11-06 (無題)(おっさんがええ感じで)(debaser)
09-11-26 FUTAGO(debaser)
+++
――なんか後半になればなるほどタイトルに「(無題)」が多くない?
――やけんその後ろに括弧で冒頭のフレーズを付けとるやろ。
――そういうことを言いたいのではないんだけどね。あ、パンツ見えた。後ろについてる「巴里子」とかは?
――それは名義違いやね。一条さんって人は「一条」って名前が好かんかったらしいね。
――そうなの? あ、ピンク。
――いや知らんけど。でも今は「debaser」って名乗りよんしゃるよ。
――じゃあ一条名義の最後の作品が「一条さんがやってくるわよ」なんだ!きゃははっ!やっぱ縞パンはかわいいね!
――なかなか皮肉がききよるし、デビュー作「鴎(かもめ)」もイメージされるね。ってパンツパンツうっさいわ。
――タイトルの話に戻るけどさ、名前がタイトルの作品がなかなか多いね?
――唐突だな。そやね。これは投稿日順に並べただけなんやけど、07年以降多く感じるね。
――06年の「チャンス」はあだ名だけどさ、これが一条さんって人の名前タイトルの始まりと言えそうな気がする。
――「チャンス」
――「メアリー、メアリー、しっかりつかまって」
――「町子さん」
――「川島」
――「ポエムとyumica」
――「john」
――「ホーキンスさん」
――「ラオ君」
――「RJ45、鈴木、」
――「愛と歩いて、町を行く」
――「「一条さんがやってくるわよ」」
――が、挙げられる?
――「鴎(かもめ)」から「FUTAGO」までの66作品中11作品が名前を含んどるけど、
――「メアリー」と「愛と歩いて」と「「一条さんが」」はタイトル拝借やけん除外して、そうすると8作品か。
――約六分の一って多いのか少ないのかわからんけども。
いつの間にか公園中の子供たちの数が倍になって夥しい子供たちがパソコンの周りにあたしたち二人の周りに集まってきていてとてもうるさいしドトールのコーヒーが薄くてぬるくてあたしの気分はとても最低だった。パソコンの隣で煙草を吸うと嫌な顔をする彼を無視してあたしはポケットからキースを取り出し火をつけて深呼吸するの。
+++
「つまり」から会話を始める人間が苦手で、それは「つまり」接続詞が何とも接続されていないことから感じる気持悪さなのだけれど、彼はそんなことお構い無しに「チャンス」から「RJ45、鈴木、」までの人名タイトルについて話し始めた。
13回目まで数えられた「つまり」を無視して彼の話をまとめると、一条さんって人の人名タイトルではタイトルに挙げられている名前の人物が死んでいることがほとんど、ということだった。無視された彼は周りの子供の一人に小銭をやって、何か温かい飲み物を買って来てくれないか、と頼んだ。おつりをお駄賃としてやると横柄に彼が言うと、だったら萬券よこせや、と二人の福沢諭吉が連れ去られてしまった。二人の福沢諭吉はそれを持った男子が隣の女子にもう一人の福沢を渡してしまったので離れ離れになって、福沢と男子と福沢と女子はそれぞれの配下の男子と女子を引き連れて公園の外の自動販売機へ左右に分かれて駆けていった。
つまり、「チャンス」では語り手の回想として「チャンス」というあだ名の男子が語られているけど「チャンス」という男子自体は詩の中に登場しないし、詩の中に登場しないという意味だったら「町子さん」も医者の前で病気と告げられるだけで語り手との距離の隔たりが心理的地理的にあったりなかったりしそうで、肩を叩くのがリストラのメタファみたいな「川島」ではリストラ=首切りみたいなイメージで社員である人格が殺されちゃってそうだし、「ポエムとyumica」の「yumica」は殴り殺されるし、人名っていうか犬名だけど「john」では表記違いの「ジョン」の墓が建てられてるわけで、墓が建てられるというか棺桶に入っちゃったり葬式の場面があったりするのは「ホーキンスさん」で、「ラオ君」はいじめからの自殺が匂わされているようだし、「RJ45、鈴木、」は父である「わたし」と「鈴木」の恋人である「あたい」が相互に語り手になっていて「RJ45」ってのは父のつけた「鈴木」のあだ名でスペースシャトルと七夕のストーリーが地球と宇宙の往還みたいになって兜はそれの目印みたいでなんだかわけわかんないけどなんだか知らないうちにほっこりしてしまうけど、でも妻と義兄みたいな不穏な結びつきは「あたい」と「鈴木」が結ばれないことの暗示にも見えて最後に「死にたくなくなくない?」ってオチつけちゃうあたり死の匂いがするんよね。ソーファーソーファー。
彼が寒いと言うのであたしの飲みかけのドトールを一口飲ましたったけど冷たいって文句ばかり言うからあたしの唾でも舐めてたら?って挑発したらキスしてきたので殴ってやった。唇にはいつも煙が溢れている。カモン、カモンと鴎は空を飛び交っている。そうこうしているうちにパソコンはミドリさんって人のレスを映し出し、男子は大量の缶コーヒーを買って帰ってきて、女子は大量の缶コーヒーを貰って帰ってきた。缶コーヒーのほとんどが空っぽだったけど彼とあたしはそれぞれ未開封の缶コーヒーをもらって温かく飲んだ。一本一万円の缶コーヒーの味がする?ってあたしが訊くと彼は神妙な顔つきだったので煙草の煙を吹きかけてやった。煙はいつもわっかになってあたしたちの周りに溢れている。カモン、カモンとさっきより四倍になった子供たちの何人かがわっかになったそれに
つかまった。
+++
?新聞紙で兜を作るという”昭和初期”の習慣を「今っぽく」見せようとする話者と、その状況的な面白さ。
?みんなでスペースシャトルの打ち上げを見守った後、「うちゅうがどこにあるのかだれもしらない」などといったナンセンスとイノセンスの同居。
?「ボストンバックにありったけの下着を詰めこみ」誰だってロードムービーみたいな旅をしたいと「あたい」に謳わせる”無頼派”としてのポエマー=一条の鏡像とロマン。
(ミドリ・レス、一条「RJ45、鈴木、」)
*
わたしは新聞紙で人数分の兜をこしらえてみんなの頭にかぶせた、なんかスイ
カ割りでも始めちゃう気っすかと言って鈴木は兜の位置を今っぽく整えた、お
父さんも興味がなかったりあったりなんかしてとRJ45に言われてわたしは、今
っぽく赤面したが、RJ45にはわたしの思うところの今っぽさが伝わらなかった
ようだ
スペースシャトルが打ち上げられる時間になるとみんなが空を見上げていた、
ななじななふん、だけども、うちゅうがどこにあるのかだれもしらない、
あたいは鈴木のことがすごく好きだよ、汚物にまみれても鈴木を見てると胸が
クソになるくらいときめいて鈴木がなしじゃ到底やっていけないって本気で思
えてくるんだ、そんで鈴木に会えない日は「鈴木がなし」ってパソコンで入力
して画面に浮かび上がる鈴木をずっと見ているんだ、そうやってるとまるで鈴
木がそこにいるみたいで鈴木に話しかけたくなって、
娘が連れてきた男はとんでもなかった、妻は台所でキッチンをして義兄はいっ
ぱしの男を夢見てあれやこれやをいじっている、はじめまして、鈴木と申しま
す、外資系の証券会社でトレーダーやってまーす、ブルーンバーグの端末すげ
え並べちゃってますよデスクに、
あたいはそれで大きな小窓を作った、先っちょがとんがってて何よりも鋭いの、
その小窓から外を眺めると祖父でも祖母でもない人たちのオバケが声をそろえ
てソーファーソーファーってなかよく歌っている、なるほど歌声には生きてる
も死んでるも関係ない、それにしたってソーファーソーファーと繰り返すだけ
の歌をああやってずっと歌っているのはオバケだからやれるんだ、なんてタイ
トルの歌なのかしら、あたいだって近頃はうまく暮らしてるんだから、あんな
歌を歌うくらいいちころよ、ソーファーソーファー、ほらね
音楽作って金稼いでモデルと結婚しよう
そんでパリに越してヘロイン打ってスターとファックしよう
Time to Pretend
鈴木ってありふれた名前だしわたしは鈴木をRJ45と呼んでみようかなと思って
いるんだ、わたしがRJ45と呼ぶからといっておまえは今までどおり鈴木で通せ
ばいいし、RJ45が気に入ったなら気兼ねなくRJ45と呼んだっていい
あたいはボストンバックにありったけの下着を詰め込んだ、だれだってロード
ムービーみたいな旅をしたい
でもね鈴木あたいも近頃詩を書いてるんだよ鈴木が書いてたみたいに鈴木のま
ねをして詩を書いてるんだ、なんで詩を書きたくなったのかわかんないけど鈴
木の詩を読んで単純に泣けてきたんだよあたいも鈴木みたいな詩を書いてあた
いの詩が誰かをあたいみたいに泣かせることができたらいいなって鈴木に話し
かけたんだでもね鈴木あたい唐突だけど、
テレビは小春日和だかの特集で芸能人が秋葉原で起きた事件を神妙な顔で読み
上げている、妻は押し黙って義兄となにかはじめるようだ、まあ、それくらい
わたしたちの目の前に現れたこの鈴木って男ときたら
なながつななにちにたなばたつめがあたいが詰め忘れた一枚の下着のほつれを
機織りで補修している、あたいは出来上がるのをそばで待って、知らないうち
に眠ってしまった、機織りの音が鳴り止むと、あたいは目を覚まし、下着がす
っかり元通りになっていた
あたいは鈴木とつまるところで恋人っぽく抱き合った、鈴木はがらにもなく照
れてあたいは幸せだった、あしたはあたいが生まれた日だよって言うと、鈴木
は恥ずかしそうに笑った、なんでそこで恥ずかしがるのよとあたいは鈴木を問
い詰めた
なんにも経験していない青春時代を思う
ばかばかしくて楽しかった そんでとても素敵で若かった
Salad Days
その時間になると、みんなで空を見上げた、あたいはそわそわして鈴木もそわ
そわした、ねえねえそれって降りてくるのそれとも。妻は義兄のそばを離れな
かったけれど、わたしに言わせればそんなことはどうでもいい。みんながわた
しのこしらえた兜をまだかぶってくれているのだ、
トントン、トントン、トントトン、
あたいは元通りになった下着もボストンバックに詰め込んで家を出た、鈴木は
あいにく待ち合わせ場所には来なかったけど、あたいはいつも理由もなく幸せ
だった、だけど、死ぬかもよってだれかに言われたら死にたくなくなくない?
(一条「RJ45、鈴木、」全文)
+++
言葉が水にひたされている。どこから流れてきた水なのか、水はとても黒かった。飲みなれない缶コーヒーを吐き出しながら、男子の一人が「RJ45、鈴木、」を朗読した。
「RJ45」ってのをダーザインさんっていう人は「パソコンのコネクタ呼ばわりされてる鈴木」と読んでるし、父親である「わたし」にとって「鈴木」はとんでもない男みたいだった。「スイカ割り」に「兜」は必要ないし、「兜」は頭蓋を守る為のものだし、頭蓋がわれたら赤いのーみそとかがでんでろりんと出てくるから、なんとなく割れたスイカみたいだなって思ったりするよね。
「スペースシャトル」は宇宙へ行くための乗り物で、その行き先はいつだって宇宙なんだろうけど、その打ち上げを見守ってる人たちだって宇宙へ行く乗り物って知ってるんだろうけども、ミドリさんっていう人が「ナンセンスとイノセンスの同居」って指摘してるみたいに、「うちゅうがどこにあるのかだれもしらない。」てのは、あたしたちがいるところとは別に宇宙ってのがあるみたいに言ってるけど、あたしたちがいるところがすでに宇宙じゃないって何で言えるのさ。
たとえば、誰かを好きになるってことは、そんな風に自分の立ち居地を「だれもしらない」って気付いちゃうようなゆさぶりみたいなもんに似ていて、だから「兜」で何かを守った気にしたいし、「汚物にまみれても鈴木を見てると胸がクソになるくらいときめいて」、内も外もくそまみれになったって構わないって気持にさせられちゃう。
「妻/義兄」、「あたい/鈴木」、「わたし/RJ45」ってペアを組んで、七夕から「織姫/彦星」みたいなペアも想像して、結ばれてるけど結ばれない、結ばれてないけど結ばれてる、そんな関係を想像して、それってどんな関係だろうと考えてパソコンのコネクタとかそれをつかった「大きな小窓」とかインターネットであたしたち送信してるのかされているのか、結ばれてるけど結ばれない、結ばれてないけど結ばれてる、そんな感じ?生きてる?ソーファー?
そんな風にのーみそ垂れ流すみたいにあたしたちみんな結ばれてんのか結ばれてないのかわかんないんだけど、「詩」ってものを書いて晒しちゃうことがなんとなく以上に恥ずかしいと思うし、テレビのニュースでは血を流して死んでしまった人が番組として流されていて、まったくの他人の生き死にが情報としてあたしたちと結ばれてんのか結ばれてないのかわかんないんだけど、「ほつれた下着」が直れば「あたい」はそれを履けるし、男の股間のコネクタは薄い布一枚で接続不可能なの?
だからさ、「理由もなく幸せ」でも「死ぬかもよって言われたら死にたくなくなくない?」ってさ、「死ぬかもよ」って言葉が結ばれちゃったの結べなかったのどうなのよどっちなのよ。「兜」でのーみそ守りきれずに、どこかのだれかにぜんぶ送られちゃったの?
――どんだけ馬鹿やってくれるかなーという他人の期待にこたえて馬鹿をやるほどぼくは馬鹿じゃないんですが、というか、そういう馬鹿にはなりたくないと思いますが、残念ながらぼくは馬鹿なんじゃないでしょうか。
わっかにつかまえられた男子は空に浮かび上がって行くにつれて、少年から青年になって壮年になって老年になった。隣では「兜」をかぶった女子が同じように浮かび上がって、老年になった。ソーファーソーファーと祖父でも祖母でもない二人は歌いながら空を飛び交っている。そのうち一羽の鴎が二人を捕まえているわっかを突き破るだろう。
+++
これはすごく、「0」に近いよな。
なんか、対象の不在を証明する記号。ここには、というか、なんだ、なにもありませんよという、サイン。
難しい事だけど、分りやすいなあ。ホントに。すごいなあ。「0」はこえーなあ。
(Ezra・レス、一条「ラオ君」)
*
あー、尊(みこと)ちゃんのお母さん、久しぶりやね、いやん、あいかわらず元気よ、そんでね、今度の水曜日、森本先生が見せてくれる言うてるねん、算数の授業、そうやねん、あけみ、算数いっこもわからんわーって言うから、心配なって電話したら、B組やったらええですよって、そうなんよ、A組はさすがにね、そんでね、B組やったら尊(みこと)ちゃんもおるし、ラオ君もおるし、そうそうインド人の、えー、そうなん、ラオ君死んでもうたん、どこでよ、なんでー、ほんまに、うわあ、あけみそんなんいっこも言えへんから、なんでそんな死にかたしたん、いじめられとったん、いつからよ、えー、いややわー、ショックやわー、この前、ラオ君のお母さんダイエーにおったよ、あのひと、ラオ君のお母さんやと思うねんけど、ここらへんインド人なんてラオ君のとこだけやし、あー、でも、ほら、ちょっと前にラオ君のお母さんって駅んとこの本屋さんで万引きして警察につかまったんやって、警察よ、日本の、えー、知らんかったん、有名な話よー、警察に連れて行かれたん見たんよ、いや、わたしやなくて、旦那さんは知らんわ、あ、でも一回ダイエーの家電売ってるとこで会うたことあるよ、そうそう3階んとこの、えー、あそこつぶれたん、ほんまに、いややわー、ショックやわー、そんでね、だからつぶれる前よ、ラオ君もおったからこんにちはって挨拶したら、そう、変な日本語しゃべってたわ、新しい冷蔵庫をね、そう、なんか、サンヨーの冷蔵庫が壊れたとかなんとかで、新しい冷蔵庫をね、東芝のを買いに来たんやって、ちょっと怒ったかんじで、そうよ、そこにおったんよ、奥さんおったんよ、警察につかまる前やと思うけど、あれ、ほら、なんていうの、インドの服、着物みたいなやつ、そうよ、それよ、だらしないやつ、それ着ておったんよ、旦那さんはスーツかなんか着てきちっとしてたんやけど、そうやねん、カレーのにおいがすごいするのよ、カレーばっかり食べるのよね、インドの人って、そうなん、あけみ、そんなんいっこも言わへんから、家でラオ君の話なんて聞いたことないよー、訊いても言わへんもん、だって、そんな死にかたしたらふつうの子は言うやん、そうよ、わからんわ、わからないわよ、え、お墓、お墓でしょ、インドの人も、死んだらお墓やんね、いややわー、ショックやわー、そうやねん、いっこもわからへんねんて、算数、お墓ちゃうよ、尊(みこと)ちゃんは大丈夫やわ、かしこそうな顔してるもん、ほんとよ、旦那さんに似たんよ、男前やもん、ブルース・ウィリスに似てるもん、あんたちゃうよ、あけみはあかんわ、ラオ君に教えてもらえばよかったのに、算数、算数よ、万引きちゃうよ、わたし、そんなんよう教えんわ、ぜったいそうよ、でも森本先生も困ってはったんちゃうかな、ラオ君、算数の時間、ずーっと目つぶってるねんて、ほんとよ、ずーっとよ、知らんかったん、有名な話よー、最初から終わりまでつぶってるねんて、そんでいつもテストは100点なのよ、そうよ、気持ち悪いのよ、そういうこともいっこも言わへんのよ、痛かったやろねー、そうそう今度の水曜日、B組ね、B組のほうよ、あけみはあかんわ、わからんわーばっかり言うてるのよ、算数よ、ラオ君ちゃうよ、なんやいうたら、算数わからんわーって、そればっかりよ、もうね一日中、わからんわーわからんわー言うてるのよ、いっこもわからんわけないわよね、なんかわかってるはずなのよ、そうよ、ぜったいよ、尊(みこと)ちゃんはわかってるのよ、あけみもほんとはなんかわかってるはずよ、そうよ、わかってるのにいっこも言わへんから、そういうことは、いっこもよ、そうよ、算数いっこもわからんわーって、ほんとよ、いややわー、ショックやわー、しっこもれそうやわー(一条「ラオ君」全文)
+++
順調に上昇していた別の女子は二人組みでいい感じにおばはんになると、わっかの煙からお腹の肉や背中の肉をはみ出しながら順調に噂話をはじめたようだ。
すべての「尊(みこと)ちゃん」にルビは振られて、ルビは失敗して括弧に括られているのであるが、「(みこと)」は括弧の中で窒息もせずに生き続けているので、会話の中で名前だけが脈動している、それゆえ死んだ「ラオ君」もまた噂話の中だけでは生かされ続けているようで、固有名詞はEzraっていう人が言ったみたいに「0」みたいになってる(?)
やけん「ラオ君」が死んだのも「ダイエーの家電売ってるとこ」がつぶれたのも同様の「ショック」しか受けんし与えられんし、そんなん全部噂話やし「あけみ」は一つも話してくれないし、「わからんわー」「算数わからんわー」って「0」やったら何をかけても「0」やしね、話かけても「0」なんやろうねどうなんやろうね。
インド人の「ラオ君のお母さん」は万引きして日本の「警察」につかまったらしいんやけど、インド人の「ラオ君」は死んだら日本のあの世に行くんかな(?)これってナンセンスとイノセンスの同居か知らん。
あー、「しっこもれそうやわー」ってあたしたちの上空で老年に近付いてってる女子どもが言うので見あげたら水玉のパンツを二人とも履いていて、おばはんのパンツ見上げてもつまらんねって彼が言うので彼には教会に行ってもらったら、やっぱり教会はおしっこまみれで、世界は真暗闇で、おしっこはじょろじょろじょろと流れているようだった。公園の周りのあらゆる走路はすべて妨害されていて、上空でわっかにつかまっている老夫婦はお互いのアイスキャンディーを舐めさせあっていたようだった。
彼が教会に行ってしまったのであたしが代わりにノート・パソコンをいじっていたらまだわっかにつかまっていない女子たち男子たちの何人かが今度はわたちたちが朗読したいというので一条さんって人の別の詩を読ませてあげようとあたしはダブル・クリックを。ダブル・クリック。をを。
+++
そうですね、これを書いているときにはゆらゆら帝国の「空洞です」という音楽が
擬似で流れてましたね。
おれは空洞 面白い
バカな子どもが ふざけて駆け抜ける
おれは空洞 でかい空洞
いいよ くぐりぬけてみな 穴のなか
さあどうぞ 空洞
たとえれば、バカな子どもがくぐりぬける空洞になりたいし
いっぽう、空洞をくぐりぬけるバカな子どもでもありたい、とも思うのですよ。
(一条・レス、一条「ホーキンスさん」)
*
この詩を読むという行為は、座り込んで石を並べている一条さんの向かいに同じように坐って、僕もじっと石を並べるのを見ていることだったような気がします。
(右肩・レス、一条「ホーキンスさん」)
*
(1)
ホーキンスさんの顔はくしゃくしゃだった。ホーキンスさんをみているとこれくらいの年齢で人生を終わるのが楽ちんかもしれないと思った。外はまっ白になる一方で夕暮れになるとみんながそそくさと帰ってしまうこともしかたがないと思った。ホーキンスさんが眠りにおちるとあたしはアメリアを抱いて病室をあとにした。帰り道に厚手のコートが落ちていたらアメリアをほうりだしてあたしはたぶんそれを手にとってしまうような気がした
暴力団は水曜日になると決まった時間にやってきてあたしの家の近くでどんぱちをはじめた、あたしは人生のステップアップのために役に立つ資格をとろうとしてるんだけど、どんぱちが始まると勉強どころじゃなかった。それよりもあたしが言わなきゃいけないことは試験問題がじぜんにもれてたってこと。それはずいぶんとあとになってわかったことだけど、そのせいであたしの人生が台無しになったなんて嘘みたい
(2)
ホーキンスさんが病院でなくなってからあたしは毎日夢をみた。銃声がきこえて銃弾があたしの頭をかすめたり、銃声がきこえて銃弾があたしの頭をかすめたり、銃声がきこえて銃弾があたしの頭をかすめたり、銃声がきこえて銃弾があたしの頭をかすめたり、銃声がきこえて銃弾があたしの頭をかすめたりした。夢の中で起こることだってすこしくらいは現実になるのかしら、
(3)
アメリアは生まれたばかりの赤ちゃんだった。そしてアメリアはいまのあたしと同じ年齢になってそのころには午後三時にどこかへ出掛けるのがあたしたちのかずすくない日課でデパートの特売セールで購入した冷蔵庫が壊れた時に二時間くらい遅刻してやってきた修理工と結婚して生まれたのがアメリアでだけどもなんてことはなくてあたしは彼女にそのことは何度も説明した。だからといってあたしたちのあいだがぎくしゃくすることはなかった、
あたしがいくつかの届出をおこたったせいでアメリアにとっては不都合なことがつぎからつぎへと起きた。例えば彼女には本当の名前がなかったし、それであたしはアメリアと呼ぶことにしたんだけど、なんかの雑誌の表紙にのってたモデルの名前を借りたのだ。アメリアにそれを言うと、いつか返さなきゃ駄目なのって言ってたけど、アメリアに返すあてがあるのかはわからなかったし、ほとんど迷惑に思われるに違いない、どっちにしても。
(4)
ホーキンスさんの葬式が終わるとみんなはいちように退屈な顔で帰っていった。水曜日に葬式をしたのがそもそもの間違いなのだ。あたしたちは暴力団のどんぱちが気になってホーキンスさんの生前に思いをはせるまでに至らなかった。自分が死んだときには自分がどんな棺おけにいれられるんだろうってそんなことばかり考えてた。あたしもよとアメリアが言って、知らない女の子があたしもよとあたしたちのうしろから言ったのが聞こえた
(5)
ホーキンスさんが暴力団と敵対していたことは全国ニュースにもなったし世界中の誰もが知っている。それが原因でホーキンスさんは命を落としたのだ。
(6)
冷蔵庫の中には瓶がいくつかあって瓶の中にはピクルスがあった。それは家族のだれかの大好物でピクルスが合いそうなおかずの時にはあたしもよく食べたりした。瓶がからっぽになるとそれを冷蔵庫の中にもどして、あたらしい瓶がはいりきらくなってはじめていつくかのからっぽの瓶を捨てて、それを年中くりかえしているから冷蔵庫の中にはいつも瓶があった。そして瓶の中にはいつもピクルスがあった。
(7)
けっきょく、試験には受からなかった。筆記試験は三回目に合格してそのあと七回つづけて口頭試験でうまくいかなかったから。あたしが出会った面接官は合計二人でそのうちの一人とは街で何度かすれ違って気安く挨拶なんかしてみたけど、だからといってそれだけじゃうまくいかないもの。そのとき、事実上あたしは人生をはんぶんあきらめた。人生のはんぶんがどこからどこまでか決めることはもっと複雑だけど、とにかくあたしは人生のはんぶんをあきらめることを決意した
あたしはしばらく泣きそべった。だれのハンカチかしらないけどそれで涙をふいた。
(8)
いわゆる遺産というものはだれの手にもはいらなかった。それはホーキンスさんの遺書にも書いていないし、あとから知った話でもなかったけど、だれもがそう思ったのだから本当なんだろう。
ホーキンスさんがなくなる前の日にあたしはアメリアをつれてホーキンスさんの病室を訪ねた。なんにんかの看護婦さんに囲まれてホーキンスさんはとても楽しそうだった。アメリアは大好きな詩を朗読してホーキンスさんにきかせ、そのときだけはみんなしずかにアメリアの声をきいた。
(9)
暴力団はどんぱちをやめなかった。
それでも暴力団はどんぱちをやめなかった。
(10)
あたしはアメリアを寝かしつけるとドレスに着替え、家を出た。暴力団がどんぱちをやっていて、あたしは暴力団の中にはいって、
あなたたちのおかげで街はまえよりもずっとしずかになりました、ありがとうございます、感謝をしているのです、あなたたちがホーキンスさんと敵対していたことも知っているのですよ、ご存知のようにホーキンスさんはなくなりました、だからといってあなたたちがどんぱちをやめる理由などないというのもわかっていますしそれどころか気のすむまでおやりなさいなんてほんきで思っているのです、あたしは人生のステップアップのために役に立つ資格試験に何度もおちた女ですから、そんなおんながあなたたちの目の前でたいそうなことを言えるなんて思ってなどいません、だけど、今日があたしの人生の最後の日になる予感がしたんです、だからこんな色のドレスをあたしは着てるのです、考えてもごらんなさい、こんな色のドレスを正気で着れる人なんてだれがいましょうか、だけどもあたしはほんとうに正気なのですよ嘘とお思いなら撃ってくださいな、あなたたちがいつもやってるようなふうにあたしを撃ってくださいな、なにをかくそう、あたしは正気なのです、ただ人生のステップアップに失敗して、いまはこんなすがたなのにあなたたちになにかを言おうとしてるのです
(11)
その日は朝になってアメリアが目を覚ますと家にはだれもいなかった。ほんとうにここにだれかいたのかしらとアメリアは思った。もういちど寝ようとしたけどうまくいかなかった。もういちど寝ようとしたけどやっぱりうまくいかなかった。アメリアの部屋にはだれもいなかった。アメリアは起きあがるとホーキンスさんがむかしくれた手紙をつくえから取り出してよみはじめた。それはお母さんが昨日くれた手紙とまったく同じないようだった。アメリアは読みおわるとバカみたいって言ってもういちど寝ようとした、こんどはうまくいって、けっきょくバカみたいなのは(一条「ホーキンスさん」初出、全文)
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朗読を終えた子供たちの周りでは朗読を聴いていた子供たちが喝采の拍手を行っており、鳴り止まぬ右手と左手の悲鳴を背景に死んでしまった一人の男子をホーキンスさんに見立てた葬儀が粛々と公園内では執り行われていた。
彼女は相変わらず煙草をわっかに吐き出し続けていて足元には吸殻が教会に行く前より増えているから、僕はおしっこに濡れた靴やズボンの裾のべとべとを意識的に無視してさっきよりも八倍に増えた子供たちの群れに入っていった。
公園の地面には水玉の影がいくつもできていて、見あげると水玉のパンツがいくつも浮かんでいる。
今日は水曜日なので公園の右側と左側に子供たちは分かれてどんぱちをはじめた。真ん中には顔をくしゃくしゃにされた「ホーキンスさん」役の男子が横たわっている。固有名詞は「0」で、それを中心にまわりはどんぱちしているけど、そのどんぱちだってルーチン・ワークに過ぎないのだ。
僕は立ったまま眠る自分の特技を思い出し、夢の中で「ホーキンスさん」役の男子に近付いていったり、夢の中で「ホーキンスさん」役の男子に近付いていったり、夢の中で「ホーキンスさん」役の男子に近付いていったり、夢の中で「ホーキンスさん」役の男子に近付いていったりした。空洞の周りで子供たちはどんぱちしているし、どんぱちしている子供たちもまた空洞だった。
眠っている僕に気付いた彼女が一人の女子を連れてきて「彼女がアメリアよ」と言って僕に紹介したけれど、僕と彼女はいっかいもそういった行為にいたったことはないし、きっとこれから先もそういった行為にいたることはないのだろうと思うので、彼女は「アメリア」役に過ぎないわけで。
借り物の名前は借り物固有名詞で、もしかしたらそれは「0」を免れているのかもしれなくて、「アメリア」役の女子はいつか「アメリア」に自分の役柄を返さなくちゃならないんだろうけれど、返せるってことは「0」じゃないってことじゃないかしら、とは彼女の言葉だった。あたしもいつかあたしの役柄を誰かに返さなくちゃいけないのかもね、あたしはまだ返す宛てを見つけてないや、と彼女が続けると、あたしもよ、と知らない女の子が僕たちの後ろで呟いた。
リンリン、リンリン、リンリリン、
鈴の音のように知らない女の子は言う。冷蔵庫の中に瓶がたくさん入っている様を想像してほしい。どの瓶の中にも一欠けらのピクルスも入っていないのだとしたら、冷蔵庫の中は空っぽでいっぱいってことじゃないのかな。
充填された空洞を子供たちが体現している。子供たちを充填された空洞が体現している。男子も女子も色とりどりのパンツだったが、どいつもこいつもつるっつるで空っぽだった。浮遊する水玉は公園の空を飛び交っている。カモン、カモンとはびこっている。どんぱちをくぐりぬけて「ホーキンスさん」役の男子にようやく近付いてみると棺桶は冷蔵庫で代用されていたのだった。
僕は試験に落ちたことを思い出す。スキルアップのための資格試験を受けたのだけれどなんのスキルをアップさせたかったのか今となっては覚えていない。そうやって何かのスキルが知らないうちにアップされていれば社会は僕という個人を認めてくれたのかもしれない。試験に落ちるということは社会に認められないということだろうか。わかんないけど、少なくとも試験官の準拠する合格基準には認められなかったことは確かだ。認められなかった僕の半分側をあきらめたら、もう半分側はなんだろうか。人生のもう半分ってなんだろうか。
人生っていうのが生まれてから死ぬまでの間だけだと考えられてるけど、誰かの話題にのぼっている限りはその話題の中だけでも生きているのかもしんない。人は人から忘れられたときに初めて死ぬのだ。そんなインチキ・ハード・ボイルドみたいな台詞を言ってみて、死んだ後に人人の話題になることが人生のもう半分なんじゃないかって思ったら、遺産もなにもないって「ホーキンスさん」が言うのは、もう半分の人生もなかったてことなんじゃない?って「アメリア」役の女の子が僕の疑問に答えてくれた間だけ、公園はとても静かで、どんぱちはいつのまにか野球になっていて、攻勢の男子と女子も守勢の男子も女子もみんなそろって空を見上げていた。打ち上げられた白球が落ちて来るのを静かに待っていた。黙祷のようだった。
リンリン、リンリン、リンリリン、
その様子を見ていた知らない女の子は退屈そうな顔で滑り台の上に突っ立って公園を一回り見渡すと、バカみたいと言って教会とは反対の方角へ歩き出した。あたしも彼も見上げる子供たちも見上げられてる子供たちも誰一人「ホーキンスさん」の具体的な財産に興味はなかったのだが、誰一人そのことに気付かなかった。
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読み進めるたびに脈絡はぶつぶつと切られては結びなおされ、切られては結びなおされ、浮かび上がってくる謎は、手がかりばかりが死ぬほど与えられて、読者はいつまでも肝心の餌にありつけないまま(まさに犬のように)、お預けをくらわされ続けるわけです。
(ヒダリテ・レス、一条「john」)
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私は、一条さんの作品はまだあまり読ませて頂いてないのですが、この作品を読んで感じたことは、この夫婦は「共犯者じゃないか」ということですね。
だって、私が「犯人役」になったり、妻が「犯人役」になったりするんでしょ?
もっとも、この小説?の中でも、私は何回も「書き直し」をしているワケですから、「犯人」なんて、ホントは最初からいなかったのかもしれない、そういう解釈も出来るワケです。
(はるらん・レス、一条「john」)
*
のっけからヤラれたよ。犯人が「身代金を用意しました」て電話してんだよ
ね。人間関係(犬を含む)、小説内の虚構と現実、時間、生と死、すべてが
揺らいで一定しない。そんな状態でキチンと作品になってんだから、エラい
ね、一条さん。
一定してる部分が何カ所か。ぼくの気付いた事柄を箇条書きに。
1)葡萄の中身。
2)小説を書くのは、私。
3)歌をうたうのは、妻。
4)犬の名前は、ジョン。
5)ちんこ。(人類は先天的に下ネタが好きなのですw)
この中では、1)の「葡萄の中身」のキャラが立ってないのが、残念です。
せめてビジュアル的な描写がいくつかあれば、作品内での葡萄の中身の立ち
位置が決まるのにな、と思いました。
(Canopus(角田寿星)・レス、一条「john」)
*
この作品は構造として全てが破綻している。ぐっちゃぐたなんです。内部に柱はいくつも通っている、でもその柱って全部が点で勝手な方向に据えられてて、「これで家なんか立つわけねーよ」「あれ?立ってるよ?」みたいなオモシロさがある。
(ケムリ・レス、一条「john」)
*
>身代金はどこかに用意されたまま、例年より冷たい冬の空から雪が落ちてくるのを、私は妻とベランダで寄り添いながら眺めた。
ここらへんはですね、地味ですが、ぼく的には、この作品のキーのパーツになるわけで、この描写がなければこの作品は成立しない、くらいの思いはあるんですが。思いはあるんですが、意外と、そう思われてないんじゃないだろうか、ということに最近気付き始めまして、中身がないって言われることに関しては、まったく動じないんですが、中身がないと言われて、いや、一応中身はあるんですよ、というのもね。中身が陳腐なだけで、中身がないということではない、ということをこの場を借りて言わせてください。
(一条・レス、一条「john」)
*
四つに区切って解読していくといいと思います。
〜誰にも読まれなかった。
〜名前を与えないようにした。
〜問題ではない。
〜ラストまで
まず一つ目では小説が印刷された春夏秋の半分が冬であるというのを「妻が歌を歌う」ということでばらしていく。。二重構造になっていて、そこには伏線として犯人との会話が置かれてます。
二つ目では、「二人でワンと〜骨をなめる」
これがどういうことか書かれていく。
二つ目も〜ジョンであることをあかした。で二つに割れていて、ここでは「犯人」(葡萄の中味にこだわる)に近付こうとします。
三つ目は1と2を繋げて、死にそうな犬が死んでいた。破綻している。と、まず大きくふりかえり、(自作に批評)
そのあとモニタ‐越しの世界だとばっさり切り捨てるではなく、手厚く十字架をたてる。全てを妻が包んでくれていたと感じる。
これで終らずに四つ目に一条さんはいくんですよね。決着をつけに。。
建ってある建物は図面に絶対おこせますよね。大黒柱は「一条さんの、奥さんへの愛」でしたか。ナンチテ。
(匿名・レス、一条「john」)
*
身代金が準備されたと犯人から電話があり、住所名前年齢職業全部を言わされた挙句、犯人は私にすっとんきょうな質問をした。君は葡萄の中身に興味があるかと訊かれ、私は事態が悪化するのを防ぐ為に、葡萄の中身には興味があると答えた。犯人はしばらく沈黙した後、死んでしまいそうな犬を飼っている話を始めたのだが、犬の名前と種類が明かされるまでに数十分も経過し、犯人は私の少しまごついた様子を察知したのか、電話は乱暴に切られた。階下からは妻のうわごとのような歌が聴こえ、春夏秋がちょうど半分になった頃、私は書き終えたばかりの小説を印刷した。紙に印刷された小説を私は何度も読み直したが、ひどく退屈な内容だったので、妻には読ませなかった。それ以来、妻は葡萄の中身を丁寧に櫂棒ですりつぶし、庭に植えられた観賞用の花々とともに食卓に添え、やはりうわごとのような歌を歌うようになった。特に例年よりも冷たい冬になると、その歌は私の耳には必ず聴こえてきた。書き終えたばかりの小説の冒頭には、それらのことが事細かく書かれているのだが、私の小説は誰にも読まれていなかった。眠れない日が増え、夜更かしをした翌朝に私たちは、ワンとふたりで吼え、道端に落ちていた生き物の骨をすみからすみまで舐めまわした。妻は喜んで犯人役を演じたが、私は葡萄の中身には興味がありません、と答える日もあった。そのことに激昂してしまった犯人が、いきおいあまって犬の名前がジョンであることを明かした。その日の夜、数年前に庭にこしらえたジョンの墓が何者かに荒らされ、明日私が妻に代わって犯人役をするのであれば、ジョンの墓を荒らした真犯人を突き止めなければいけない、と私は書き終えたばかりの小説の脚注欄に書き足した。私は紙に印刷した小説を最初から読み直した。最後まで読んでしまうと、冒頭部分が完全に破綻していることに気付き、ジョン以外の登場人物には名前を与えないようにした。テレビは人質が射殺されるシーンを繰り返し、ジョンを救い出した警官がやはり何者かによって射殺された。私と妻は、彼らが射殺されたビルの屋上に挟まっていた鉄パイプを二本引っこ抜いて、それで巨大な十字架を作って、ジョンの墓のそばに飾った。私の横で手を合わせている妻が、犯人だろうが犯人でなかろうが今はたいした問題ではない。やがて取材を申し込む人間が私の家にあふれ、そのうちの半分の人間を私たちは応接間に閉じ込めた。餌を与えなければ、あいつらっていつまで生きるのかしら、と妻はつぶやいた。身代金はどこかに用意されたまま、例年より冷たい冬の空から雪が落ちてくるのを、私は妻とベランダで寄り添いながら眺めた。後は、私が、死んでしまったジョンのように前脚を高く突っ撥ねて、腰を激しく振りながら、妻に覆いかぶさるだけだ。私は左のポケットから三本目の前脚を取り出しそれを真ん中にして回転しながら、後ろに積み重ねられていく手掛かりに焦点を合わせ始めた。(一条「john」全文)
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鴎は公園の空を飛び交っていたがついにわっかにつかまった祖父や祖母や祖父でも祖母でもないものたちを突き刺した。いっせいに破裂する夥しい数の水玉のパンツはいつのまにか公園を蔽い尽くしていて、攻勢と守勢を三度交代した暴力団の野球チームはタイムアウトをとって落ちてくるものを待った。
ソーファーソーファーと歌いながら砂場の近くの家に入るとあたしと彼は誘拐されていた。身代金は「犯人」が準備してくれていたのであたしたちは安心して誘拐されたけれど、知らない女の子が「葡萄の中身の興味があるか」と訊いてくるのであたしは葡萄に中身があるのなら外見も気になるところよねと答えた。女の子は沈黙して頭を振ると首につけていた鈴が鳴った。
「死んでしまいそうな犬」について鈴を鳴らしながら女の子が語り始めたのでまごついていると、公園のベンチに取り残された彼のノート・パソコンに子供たちのうちの一人がどこかから持ってきたプリンターを接続しているところだった。そのうちここまで印刷しにかかるだろう。葡萄の中身について考えていると、冷蔵庫に埋葬された「ホーキンスさん」役の子供が空洞だったらしいとの噂が聞こえた。
ほんとうに?ほんとうに中身はないの?激昂した女の子は彼の服を次々と脱がし始め全裸にしてしまうとあたしの服も脱がし始めた。あたしたち二人は誘拐されたので人質は人質らしく無抵抗にされるがままにしていた。ほら、中身はあるじゃない!と鈴の音と共に叫ぶと女の子はあたしたちの服をすべてもって家を出てしまった。きっと砂場の近くの砂漠に穴を掘って埋めてくるのだろう。
あたしたちは囚われているのに二人きりになったことで子供たちから解放されたように感じたけれど、翌朝には二人でワンと吼えた。あたしたちは犯人役と犬役を交互に演じて、この家の中にある身代金を探した。いつしかあたしたちはお互いのことを「ジョン」と呼び合い「john」でないことに気付いた。固有名詞は「0」じゃなかったかしら、とあたしが言うと、ほら、中身はあるじゃない!と彼が叫んだ。鈴の音はしなかった。
「ジョン」には墓場があったしだからこそ荒らされもした。あたしたちの埋められた服もどこにあるのかおおよその見当は付いているけれど、埋められてからどのくらいの時日か経過したのか知らない。でも「john」の墓はどこにあるのだろう。名付けるということは、名前とその名で呼ばれる対象を引き裂くようで、そんな裂けるチーズみたいに「ジョン」と犬役のあたしたちはこの家に裸で存在していた。じゃあ、裂けたチーズの境目には「john」がいる気がしない?
「尊(みこと)ちゃん」のルビである「(みこと)」とは読みづらい文字を可視化することであるけれど、「john」と「ジョン」の亀裂は音を日本語で可視化するときに取りこぼしてしまうものを可視化しているように思える。「john」が「ヨハン」ではなく「ジョン」であることから、「h」の存在が印象付けられる。
ようやく空から白いものが落ちてきて子供たちは家の外できゃーきゃー騒いでいるけれど、全裸のあたしたちは寒さに耐えつつベランダで寄り添いながらそれを眺めた。身代金を持った女の子が鈴の音を鳴らすとあたしたちはお座りしていた。女の子はあたしたちに指示を出して、あたしたちはずいぶんと長いあいだ犬だったため、女の子の指示に逆らうことは考えられず、彼が、死んでしまったジョンのように前脚を高く突っ撥ねて、腰を激しく振りながら、あたしに覆いかぶさってくると、鈴子は彼にズボンを履かせ、彼は左のポケットから三本目の前脚を取り出しそれを真ん中にして回転しながら、後ろに積み重ねられていく手掛かりに焦点を合わせ始めた。
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yumicaちゃんを殺してしまうほど、可愛いとおもっている、主人公が、yumicaちゃんの読んでいるものが分からない。
でも、それに近づきたいと一生懸命に努力する。だけど、どこまで行っても、yumicaちゃん(理想像なのかしら?)の気に入るような、つまり、自分自身、気に入るようなものは書けないし、何にしても、どこまで努力しても、「天才」とか「名人」とか自分で思うようにはなれない。
(池中茉莉花・レス、一条「ポエムとyumica」)
*
わたしがブンガクゴク島にたどり着いたとき、そこは、無人の島だった。わたしは、長年連れ添った嫁を捨て、町で偶然拾ったyumicaを連れて島にやって来た。yumicaは、どちらかというと何も知らない女の子だった。わたしたちは一緒に島を探索し、寝床になるような洞穴を見つけ、そこで生活することにした。島での生活にも慣れた頃、朝、目が覚めると、yumicaの姿がなかった。しかし三日ほどして、yumicaは戻ってきた。どこに行ってたのかを尋ねると、yumicaは、これを拾ったのよ、と一冊の古びた書物をわたしに見せた。そこに書かれている内容は、わたしにはひとつもわからなかった。おそらく、ブンガクゴク島の住民が残したものに違いない。yumicaは、それを楽しそうに読んでいる。そこに書いてある内容が君にはわかるのかい、とわたしはyumicaに聞いてみた。全然わからないのよ、とyumicaは答えるのだが、相変わらず楽しそうに読んでいる。その晩、わたしは、なかなか寝付けなかった。昼間のyumicaの楽しそうな姿が目に焼きついて離れなかった。わたしは、yumicaが寝ていることを確認し、彼女のそばに置かれた例の書物を手に取った。わたしは、ペラペラとそれをめくった。やはり、わたしには、そこに書かれている内容がさっぱりわからなかった。翌朝、わたしは、yumicaに何が書かれているのか教えてくれないか、と頼み込んだ。だから、全然わからないのよ、とyumicaは答えるだけだった。わからないものが読めるわけないだろ、とわたしは、幾分いらついた口調でyumicaに詰め寄った。そして、わたしは、yumicaを殴りつけた。yumicaは、逃げようとしたが、わたしは、彼女を逃がさなかった。紐でyumicaの両手を縛りつけた。この書物にはなにが書かれているんだ、とわたしはyumicaを問い詰めた。三時間後、yumicaは重い口をようやく開いた。yumicaの説明が一段落すると、わたしは、yumicaを解放したが、彼女は力なくそこに倒れこんだ。死んでしまったようだ。しかし、わたしは、さきほどyumicaがわたしに与えた説明をにわかに信じることは出来なかった。それから半年が過ぎた。わたしは、例の書物をペラペラとめくることを日課にしたが、やはり、わたしには、さっぱりわからなかった。yumicaが説明してくれた「ポエム」というものが、まるでわからなかった。わたしは、yumicaの腐乱した死体を呆然と眺めた。そして、わたしは、不思議な夢を見るようになった。夢の中で、わたしは「ポエム」を書いていた。死んだはずのyumicaが、わたしの「ポエム」を読みながら、これは「ポエム」ではない、と言う。これは「ポエム」だと言い張っても、これは「ポエム」ではないとyumicaは言うばかりだった。君に一体「ポエム」の何がわかるんだい、と怒鳴りつけると、決まって目が覚めた。それから、半年が過ぎた。その間も、いやな夢は続いた。わたしは、夢の中で「ポエム」を書き、yumicaに読ませた。yumicaは、わたしの「ポエム」を読むと、これは「ポエム」ではない、と言うばかりだった。わたしは、yumicaを喜ばせるために、夢の中で無数の「ポエム」を書いた。こんなことを続けて一体何になるのかわからなかったが、わたしは、しつこく書き続けた。そのたびに、yumicaはこれは「ポエム」ではない、と言った。わたしは、目が覚めると、ブンガクゴク島の住人が書いたと思われる例の書物をペラペラとめくった。わたしには、そこに書かれている「ポエム」と、わたしが夢の中で書いている「ポエム」の違いが、まるでわからなかった。yumicaは、ここに書かれている「ポエム」を楽しそうに読んでいた。わたしは、ここに書かれている「ポエム」とまったく同じような「ポエム」を書くことにした。最初はうまくいかなかったが、少しずつ同じような「ポエム」が書けるようになった。それでも、yumicaは、これは「ポエム」ではない、と言った。わたしは、頭が混乱し、yumicaの両手をふたたび紐できつく縛った。わたしは、目が覚めると、例の書物を何度も読んだ。夢の中で、わたしは、「ポエム」を書いた。両手を縛られ、ぐったりとしているyumicaは、これは「ポエム」ではない、と言った。わたしは、「ポエム」を書き続けた。死ぬまで、書き続けた。わたしは、無数の「ポエム」を書いた。しかし、それはすべてが「ポエム」ではなかった。わたしは、夢の中で、「ポエム」を書いた。目が覚めると、わたしは、例の書物に書かれた「ポエム」を読んだ。わたしには、そこに何が書かれているのかまるでわからなかった。(一条「ポエムとyumica」全文)
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シャワーを浴びて服を着ると、あたしは昇天した彼を家において外出した鈴子を追った。公園は真白く、どんぱちをしていた子供たちは雪合戦をしていた。半袖短パンの男子たちが鼻水をたらしながら女子たちを追いかけている。雪に濡れたシャツから透ける未発達の胸に興奮していたあたしは鈴子を追いかける為に教会とは反対の方角へ急いだ。
鈴子は公園から少し離れた昔からあるお寺の階段のところであたしを待っていた。紐で両手を縛りつけられた女の人が鈴子の隣でぐったりしている。ここで拾ったのよ、と悪びれる様子もなくぐったりした女の人を鈴子は蹴飛ばし、何段か下にいるあたしは鈴子を見上げる形で詰問した。
ねぇ、「ポエム」って何かしら?
鈴子は、yumicaと呼び掛けると、紐で両手を縛られた女の人が反応しないのでもう一度蹴飛ばし、yumicaと強い声で呼び掛けると、紐で両手を縛られたyumicaが反応しないのでもう一度蹴飛ばし鈴子は、yumicaと更に強い声で呼び掛けると、全然わからないのよ、とyumicaは答えるだけだった。
リンリン、リンリン、リンリリン、
鈴子は頭を振り舌打ちをするとyumicaの鞄をあさり一冊の本を抜き取ってその場にyumicaを置き去りにして階段を上り始めた。あたしは鈴子とyumicaのやりとりを煙草を吸いながら見ていた。ふっ、とあたしの吐き出した煙草の煙がわっかになって飛んでいく。鈴子はそれをひょいとよける。こういう動きが「ポエム」って言うんじゃないの?あたしにはわからなかった。あたしにもわかんないよ、と言って鈴子は手にしていた本をあたしに投げて寄こした。そこに書かれているものが「ポエム」らしいのだが、そこに何が書かれているのかまるでわからなかった。
置き去りにされていたyumicaの死体が腐乱し始めた。あたしはそれを呆然と眺めていたが、鈴子が歩みを止めないので、煙草を咥えたまま一足飛びで階段を上った。
「ポエム」ってのが、「そこに何が書かれているのかまるでわからない」という条件を満たしているものだとしたら、それを読んで「全然わかんない」というリアクションはそれが正しく「ポエム」であったという証左でしかなくて、という考えは間違いで、「そこに何が書かれているのかまるでわからない」という条件を満たしつつ「楽しそうに読まれる」ものが「ポエム」ならば、「ポエム」は「読む」という行為のなかにあらわれてくるようで、同じ「ポエム」を読んでもyumicaは「楽しん」でいたけれど、「わたし」は「わからない」という一つ目の条件につまづいて、それで「楽しめ」なかったため、同じ「ポエム」を読んでもyumicaと「わたし」は異なるリアクションで、それゆえyumicaは殺されて、されば「楽しむ」主体は殺されて、「わたし」は殺してしまった「楽しむ」主体を夢の中で再生産・再殺害しながら「ポエム」ってるけど、「ポエム」ってるって何?だって「わたし」は「楽しめ」ないのだから「わたし」にとって「ポエム」は端的に「まるでわからない」ものであるし、yumicaの「楽しめる」ものと「楽しめない」ものとの違いも「まるでわからな」くて、そもそもそういった違いって言うのはどういう風にアプローチすれば明らかになるのだろうかと考えるけれど、ようは言葉と言葉がどのように関連付けられて配列されているのかというアプローチとそういった配列に期待されている機能や効果といったことを考えなければいけないのだろうけれど、一条さんっていう人の作品を言葉の配列に注視してみてみても正直あっちょんぶりけよね、といったことを考えながらあたしは鈴子に追いつくと振り向くように指示された。下のほうで小さくなったyumicaが真っ黒な何かに覆われていた。
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スポーツの「ボーリング」を、地盤調査の「ボーリング」へと意味を滑られせていくことで、窓際族の「川島」君を巡る「肩たたき」と、その社内の戦々恐々とした感じを、ミニマリズムの濃いシルエットを、その鍔の広いシルクハットでかざしながら。優良中小企業の、実に安定した職場環境の実態を、巧みなコノテーションで描いていく。新車に、助手席のパンツとか。笑
(ミドリ・レス、一条「川島」)
*
予言する男は あらわれなかった
鬼のような形相
肩叩き
リンリン
もしもし
名指し
どこもかしこも木っ端みじんだなという顔をすれば
僕達は助かるかもしれない
自分の中では こんな感じにイメージが流れました。
川 島 シシャモ となんとなくなじんでいて
リンリンと もしもし もひきたつのがいいなあと思います。
(砂木・レス、一条「川島」)
*
川島みたいなやつは、鬼のような形相で会議室を後にした。前の日も次の日も、予言する男は現れなかった。宛名書きの仕事は、これでおしまいだ。なあ川島、と川島は肩を叩かれ、おまえは、カワシモじゃないもんな、と再び肩を叩かれた。新しい彼女が出来ちゃったもんで、今度一緒にボーリング場に行かないか、と誘われた川島は、ボーリング場に行ってもいいですけど、ボーリングというのはやらないですよ、と言った。携帯電話がリン・リンと鳴った。その携帯、おまえにやるよ、と言われたら、川島はどうやって答えればいいのかわからなかった。こんな場所にボーリング場があるわけがないという場所でシシャモは、車から降りた。新車ですが、助手席に座っている女は正面から見たらパンツが丸見えで、ここで、ブレーキ。そこは、ボーリング場。川島に聞かなければいけないことは他にもいくつかあって、携帯電話がリン・リンとなった。川島は、もしもしと繰り返しているカワシモに声をかけようかどうか悩んでいる。ここで、ブレーキした新車は、ボーリング場を後にした。ボーリングなんてやってられるか、いえねえボーリングはやらないですよ、と釘をさされたことについて、電話の相手にくどくどと愚痴ってるようだ。電話の相手は、おれじゃないよな、とシシャモが、川島の肩を叩いた。肩を叩かれたいわけではない川島は、肩を叩かれた場合にどんな顔をすればカワシモ君に気持ちが伝わるか考えていた。シシャモも同じ悩みを抱えていたが、肩を叩かれるのは、真昼間だ。ブレーキしている新車は、病院に直行して、腱鞘炎に悩んでいる女を一人拾って、カーブの向こうに衝突した。あの時、川島が助手席に居合わせたなんて、会社の誰もが知らないはずだ。ボーリング場近くのレストランで予定されていたカワシモの送別会は、腱鞘炎が悪化し延期となった。その知らせを聞いたカワシモは、ボーリング場近くの倉庫で発見されたが、シシャモさんのパンツが丸見えの件について、社内では意見がふたつに分かれた。もうシシャモの居場所は、なくなったようなもんだ。川島は、宛名書きの仕事を再開し、今度、ボーリング場に行ったら、それでもボーリングはしないことにしたが、ふたつに分かれた社内を、びゅんと新車が横切った。川島の声で、びゅんと横切った。カワシモさんの声、と女子社員がかしこまって言った。シシャモは、それはおれじゃないおれじゃないと、首を横に振り、パーティションで区切られてしまった川島の肩を、カワシモが叩いた。これはただの肩叩きじゃないのだからな、とシシャモの声で、川島は涙をこらえている。予定されていた会議は全てキャンセルされ、ねえこのあとどうするの、と聞かれたカワシモは、川島を指差した。近頃の世の中は、どこもかしこも木っ端微塵だな、という顔をすれば、ぼくたちは助かるのかもしれない、と川島はどうやら本気で思った。(一条「川島」全文)
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「川島みたいなやつ」からはじめている。
したがって、
「川島」も、
「カワシモ」も、
「シシャモ」も、
その音の横滑りによって、
同一人物であるかどうかの不確定な揺れを、
「川島みたいなやつ」
というはじまりに託している。
「新しい彼女」は、
「助手席に座っている女」にずらされ、
「腱鞘炎に悩んでいる女」にずらされ、
「女子社員」にずらされた。
「助手席に座っている女は正面から見たらパンツが丸見えで、」
つまり、
「シシャモさんのパンツが丸見えの件について、」
であり、
「携帯電話がリン・リンと鳴った。」
は、
「携帯電話がリン・リンとなった。」
であり、
「もしもしと繰り返しているカワシモ」
(は、
( (メールをしているのだろうか?
「腱鞘炎が悪化し延期となった」
「カワシモの送別会」
そうだ、
「電話の相手は、おれじゃないよ、とシシャモが、川島の肩を叩いた。」
「近頃の世の中は、どこもかしこも木っ端微塵だな」
つまり、
リストラという社会的な死を、
執行する人される人見守る人たちの固有名詞を
くるくると変えていくことで、
本当にリストラされたのは誰か
ということを攪乱することなしに
「近頃の世の中は、どこもかしこも木っ端微塵だな」
というオチにつなげる。
続く、「こっぱみじんこ パート2」では
「ぐふふ」
と笑う死んでしまったおねえちゃんが出てくる
アパートも崩されてしまう
死んでしまう
「そんな、世の中だそうで。
そんな、世の中に みんな生きてるんだそうで。」
+++
町田の町子さん、病気です
と、医者は繰り返す
わたしは、待合室の壁にもたれかけ
こわれかけたビデオデッキが再生している映画を、
それがとてもカラフルだったら
とても良かったのに、なんて
決して簡単な治療ではないというのに
いったい、誰のための手術なんだろう
あなたの笑顔には見覚えがありません
あなた、あなた、ああああなななたたたた
と繰り返してみても
だんだん夜が不思議に明るくなるんです
星とか、
犬とか落ちたり
なにかをなくしたみたいな気分で
それを言い訳にできたら
もっと強くなれるような気がするけど
それにしても、覚えることと忘れることは
どっちのほうがむつかしいんだろう
わたしは、もう覚えることをしたくありません
うしろからいつも逃げたくなる人には
やさしい挨拶を、はらわたが煮えくり返って元に戻るまで
やりなさい
ああ、わたしの家には出口が一つしかありません
だからといって
一度入ってしまうと
出ることは簡単じゃないんです
それを知っているから
みんな知っているから
そんなことさえ忘れていると思うんです
町子さん、ねえ、町子さんってば、聞こえていますか?
東京のはずれで
わたし、あなたがしあわせに
今日も明日も生きていることを知っているんだよ
(巴里子「町子さん」全文)
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もうずいぶん階段を上った。いつの間にか鈴子はあたしのはるか前を歩いているし、いつのまにかyumicaはあたしのはるか後ろで腐ってる。しかたがないので上り続けるけど、どこまで上ったら鈴虫寺につくのかわかんなかった。
階段の両脇は山林になっていて、お月様に照らされて雪化粧の木々は震えている、その間で時折白衣を着ているおっさんがちらりちらりとこっちを見ていて、あたしを追いかけているように見えるので、あたしは足早に階段を、
おっさんは「町田の町子さん、病気です」と繰り返すので「医者」なのだろう、あたしは「町子さん」ではないので病気ではないけれど、じゃあ誰って言われてもわかんない。たぶん「わたし」もわかんないから、「こわれかけたビデオデッキ」はそんな風にわかんない人たちを示していて、病院の待合室はだいたいみんなわかんない人たちで、「再生している映画」はどうせ昔話に過ぎないのだから、カラフルってよりセピア色だろうと思う。
どんどんお月様は南の空へ、だんだん夜が不思議に明るくなって、星とか犬とか鈴虫とか落ちてくるんじゃないかな。あたしはたぶんもう「ジョン」って言われても反応しないと思うけど、固有名詞をなくしたような気分で階段を上り続けていると、山林からは鈴虫の音が聞こえて、それは上れば上るほど大きくなってくるようだった。
あたしは自分の名前がわかんないけど、忘れているから覚えなきゃいけないのかな。「わたし」は「もう覚えることをしたく」ないらしいんだけど、それってなんでだろう。「うしろからいつも逃げたくなる人」って順番に並んだ列の最後尾から逃げたくなる人のことか知らん、過去から逃げたくなる人のことか知らん。なんも知らん。「やさしい挨拶」だってなんも知らん。
リンリン、リンリン、リンリリン、
リンリン、リンリン、リンリリン、
「わたしの家には出口が一つしかありません」ので、「わたし」は一つずつしか忘れることが出来ません、ひっきょう、あたしは「なにかをなくした気分」を得たくて、つまり、「忘れ」たくて、だから、「覚えることを」したくなくて、だけど、「町子さん、ねえ、町子さんってば、」って、あたし、「町子さん」に会ったこともないのに、なんか涙ぐんじゃって、「あなたの笑顔には見覚えがありません」だけど「わたし、あなたがしあわせに/今日も明日も生きていることを知っているんだよ」
けっきょく「わたし」は何を知ってるんだろう。あたしは自分の名前も知らないのに。
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あたしの学校に
チャンスというあだ名の男子がいたんだけど、
すっかり忘れてしまった
チャンスは男子からも女子からも
ついでに校長先生を含む学校中の全ての先生から
チャンスって呼ばれてたんだけど
それは蔑称で
だけどもチャンスってあだ名は
なんて素敵なんだろうって
今さら、あたしは思う
あたしの学校にはぺちゃんこのカバンで
必ず遅刻してくる子が何人もいて
オキシドールで染めた金色の髪が
なびいてやがんの
でもさ、あのぺちゃんこのカバンの中には
弁当箱が入る隙間もなくて
あたしたちは、
昼休みになると消えていなくなるあいつらの後をつけて遊んだ
チャンスは、裸にされて
廊下を逃げ惑い、
大事なとこの毛を燃やされて
本当にぺちゃんこなのは、カバンじゃなかった
もう、あたしたち全員ぺちゃんこだった
先生が忘れたのは
夏休みは、とても長くて
プールで溺れたら
助けてくれるのは誰かしら
あたしたちは、逃げ惑い
大事なとこの毛を燃やして
もう、あたしはぺちゃんこで
チャンスもぺちゃんこで
先生も校長先生もみんなぺちゃんこじゃんか
カバンの中には何が入っていますか
先生、カバンの中に何を入れたらいいですか
先生、カバンの
とてもとても長い夏休みがやっと終わって
これからだって
きっと
あたしたちはぺちゃんこで
あたしの学校に
チャンスというあだ名の男子がいたんだけど
すっかり忘れてしまった
助けてくれるのは誰かしら
チャンスは裸にされて
逃げ惑い
あたしはいつもぺちゃんこで
カバンの中には隙間がない
あたしたちのカバンの中に
あたしたちは
何を入れたらいいですか
(一条「チャンス」全文)
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公園の砂場の近くの家に置き去りにしたあたしの彼は子供たちに延々と肩を叩かれ、あたしの恋人をリストラされてしまった。そうなってはじめてあたしたちはきっと二人が恋人同士であったことに気付くのだと思うけど、だいたい気付くときには気付いたものはどうでもよくなってるよね。
彼のあだ名が「チャンス」だった頃、彼の固有名詞は完全に剥奪されていた。男子からも女子からも校長先生を含む学校中のすべての先生から「チャンス」と呼ばれることで彼の固有名詞は回復の機会=チャンスを奪われ、それゆえ「チャンス」というあだ名は蔑称として機能していた。
「ぺちゃんこのカバン」ってのはだいたいちょっと不良っぽい子が持っていて、いわゆる改造カバンってやつで、彼は、「チャンス」は裸にされたりしていた。きっと、あたしも一度や二度くらい「チャンス」を裸にしたことがあるだろうし、それ以上に裸の「チャンス」を校内で目撃していた。
あたしたちはそろって「ぺちゃんこ」で、中には何も入れられなくて、わけもなく息苦しくて、わけもなく自分を痛めつけてやりたかった。弁当箱も入んないようなぺちゃんこのカバンと同じくらいぺちゃんこのあたしはあたしたちは、それが先生にも校長先生にもあてはまるのを知って、それは大人に対する失望と大人は呼ぶけれど、はなから失えるような望みなんてぺちゃんこのあたしたちの中には入ってなかったんだ。
あたしはいつもぺちゃんこで、「カバンの中には隙間がない」から、隙間もないから、少しも空いてないから、空洞ですらないから。
固有名詞の「0」はこっぱみじんこにばらばらにされてたりぺちゃんこにつぶされてたりしていたそうやってひとはなにかをうしなったりうばわれたりかいふくしたりすかすかだったりしてるのを強い言い訳にしたりしなかったりするの?
階段を上りきると鈴子はあたしの煙草で一服していた。大量の鈴虫が上り終えたばかりのあたしに襲い掛かる。リンリン、と視界が真っ黒になるほど顔中に鈴虫が張り付いて、皮膚を引っかく六本の脚が気色悪い。舌が乾く。体中を、リンリン、鈴虫が、リンリリン、張り付き、リンリン、鈴子は、リン、わっかにつかまって、あたしの顔をしながら、リン、鈴虫まみれの、リン、あたしを突き落とし、リンリリン、
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あたしは階段を転がり落ちていく鈴子を見下ろしながら一条さんって人の作品を考える。
誰が呼びはじめたの知らないけど「一条様式」って言葉を目にしたりして、それはたとえばこんな使われ方をしている。
毎回、変えてくる手が一条様式を高めていて、読後の一文が轢いていく力の大きさが昇華を確かにしている、という意見がありました。
(a-hirakawa・コメント「2009年3月選考雑感」「文学極道blog」、一条「RJ45、鈴木、」に)
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さすが一条様式の妙は魅力的で有無を言わさず掴まれてしまう、という意見がありました。ただ推敲前の方がすきだった、という意見もありました。一条さんの作品を読むと、突き放しかたが痛快だなーといつもおもう、自身をも突き放してるんじゃないかと時々おもうほど、音読するとなぜか気持ちよかった、という意見もありました。
(a-hirakawa・コメント「2009年1月選考雑感」「文学極道blog」、一条「ホーキンスさん」に)
一条さんっていう人の書く作品の特徴を「一条様式」って言うみたい。それを端的に示しているのは、ミドリさんっていう人の言葉にいくつか見られて、これらはそのうちのいくつか。
滑らかにメタファーが永遠ループしてくんですね。
(ミドリ・レス、PULL.「「犬雨。」」)
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ずらす、ループさせる。それも自動書記的に自分のテーマにリンクさせていく書き方で。
(ミドリ・レス、香瀬「[開封後はお早めにお召し上がりください。]」)
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意味の滑らし方や、そっからトリップしてくる、”ナンセンス”の。そのウェルメードな仕上がりは、一条さんと類似しているんだけど。一条さんは、シリアスなものに向かいやすい傾向があるのに対し、ヒダリテ君はユーモアでくる。
じゃ、二人が扱ってる主題は、全く別物なのか?というと、これも案外、ある意味で近接している。ただその表出の仕方が違うんだ。という感じをぼくは持つんですが。
抽象的な言い方で、一応?「逃げておくと」笑 一条さんは、コアな部分に、異常に(ヘンタイですから。)鋭利なナイフ突きつけてくるのに対し、ヒダリテ君は、後ろでに手をくみながら、周縁を散漫に散策する遊歩者。そんなイメージですね。
(ミドリ・レス、ヒダリテ「猥褻物陳列罪の王様」)
ここで、「一条様式」ってのをミドリさんっていう人は、「メタファー」や「意味」を「ずらす」「滑らす」さらに「ループ」させて「自動書記的」に「トリップ」して「シリアスなもの」を「ナンセンス」に仕上げていくものと解釈しているように思える。では、主題とはなんだろうか。それについてはダーザインさんっていう人のコメントをいくつか見てみたい。
空無の中に恐ろしい亀裂が走っており、真っ赤な地獄の業火の舌がちらちら蠢いているさまが見えるのです
(ダーザイン・レス、一条「ホーキンスさん」)
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一条さんの空虚の中には無意味という意味がいつも暗黒の深淵を開けており、いたるところに意味の痕跡が記されています。それが、テクニカルな側面からもたらされるものとあいまって作品に立体感を醸しています。一条さんの詩群には存在論的に最悪の痛みが常に在る。
(ダーザイン・レス、香瀬「[開封後はお早めにお召し上がりください。]」)
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中身はすっからかんでも、いつもは読後に強烈なインパクトのあるイメージが残ったり、ループして行く空談の中に絡め取られたりするのです
(ダーザイン・レス、一条「小さい有色のボール」)
「空無」「空虚」「中身はすっからかん」と、ダーザインさんって人は一条さんって人の作品を徹底して空っぽなものと見ています。そして、「真っ赤な地獄の業火の舌」という比喩は読後の「強烈なインパクト」を「意味の痕跡」や「存在論的な痛み」にたとえたものでしょう。
空っぽ。
空っぽの約六文の一。
名前をタイトルにした作品について考えてみる。
「チャンス」はぺちゃんこだったし、
「町子さん」は病気だからか、忘れてばかりで何を知っているのかすら知らない。
「川島」は「カワシモ」と「シシャモ」と不統一ゆえにこっぱみじんだし、
「yumica」は全然わかんないのに楽しんでる。
「john」と「ジョン」は別の音を表記していて、
「ホーキンスさん」の棺桶は空洞で、
「ラオ君」は死んでるのに噂話で再生されて、
「尊(みこと)ちゃん」の発音は可視化している。
「RJ45」はあだ名だけど、
「チャンス」みたいに固有名詞は奪われておらず、
「鈴木」は「鈴木」って「あたい」に呼ばれてる。
固有名詞には何も入ってないかもしんないけど、
入れようと思ってもぺちゃんこかもしんないけど、
入れようとしたらこっぱみじんこになってしまうかもしんないけど、
誰かがその名で呼んでくれることもあって、
ねえだから、
あたしの名前を呼んでくれる?
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引用・参考
文学極道(
http://bungoku.jp/)
文学極道blog(
http://bungoku.jp/blog/)