喪に服す
朧月

斜めの方角からきた野心に貫かれて
私の正義は枯れてゆきました


たばこのぽい捨てなんて注意できる勇気はない
路上に捨てられた吸殻も拾えない
潔癖症の私にはふれることができない
自分で自分の手にふれても洗い流したくなり
自分の心の中も洗浄している

汚れたものを見たからいそがなくちゃと
瞳をとりだして窓から干す時間の確保に忙しい

隣の住人は朝から願い事をしている
その声がうるさくて私は神をころす
うちの神棚には神様はいない
私がとっくに捨ててしまったから
人々の願いを吸い込んでいる
汚れた神様なんて まつれないから
そんな風な思い込みに私は支配されている


そういえば去年の今ごろだったか
向かいのおばあちゃんが  死んだ時に
天国いきの道を教えるといった
その代わりにあんたのカラダをよこせと
言ってきたから私は あげたんだった

おばあちゃんは 信心なんかなかったのかな
手を合わすなんてよしなさいっていつも言ってた


ななめからまた攻撃された
かわした記憶が薄れてく
潔癖症の私のカラダに土がついたから
私は 私を滅ぼしそうになった
そんな風に一人で生きているつもりだった


そんなあたしの頭から声がした
おばあちゃんは ほいと言って
あたしから出て行った
あんたはだめな子だねって
ふわりと浮いてった

おばあちゃん あたしのただ一人の味方だった
おばあちゃんが


ごめんね おばあちゃん身代わりになってくれて
あたし やっぱりがんばって生きる
約束する 約束するって言った
あたしのカラダはもう軽かった



自由詩 喪に服す Copyright 朧月 2010-01-10 21:05:11
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