8mmの空に
within

8mmフィルムに映し出された青い空を
精液で汚して
町の中をまわる電車に
逃げ込みました
逃げ込んだ先は年老いた少年の
末期でした

野良犬は小便を垂らして
猫たちは決して譲らず
許しあうことなく
夜中じゅう鳴き続けて
人間たちは会議を開きました
互いの思いの折り合いをつけるために
殴りあうのです

とめどない逆流に
風化しないために
葬られた母親の
面影を引きずったまま
遡上します

届かない思いが引き攣って
しゃっくりが止まりません
知らない方がよかったと
成人を迎えた少年が言いました

燃やされた棺は
炭さえも残さず
白い煙は
いつか汚した空をぬぐいます

次は誰なのですか?
人は犬に訊ねまし
犬は猫に訊ねまし

行く先を知っているのは
河に棲む老魚だそうです

校庭に転がる野球のボールは
子供らの掛け声と
裏庭の男の
精液で汚されます

寒々と凍った白灰色の空気を吸い込むと
身を震わす冷気が身体から刃となって
滲み出ます

どうせなら発狂する前に死にたいと
ロヒプノールを舌の下で
溶かしながら
横になり
目をつむります

わけもわからず生まれてきたのだから
死ぬ時には泣きたくありません


自由詩 8mmの空に Copyright within 2010-01-09 15:03:06
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