おわりは始まり
りょう

マーくんとマーちゃんは
幼稚園で知り合いました
家はご近所で
よく公園で遊びました

二人とも照れ屋で
最初は大人の足に隠れ
一言も話しませんでした

ようやく砂場で
山を作りあうようになっても
一言も話しません

マーちゃんの転んだとき
マーくんが「大丈夫」と言って
手を出したのが話しの始まりです

よく手をつなぎ
ずれた会話もおかしくなくなったころ
親の都合で引っ越すことになりました
どっちがどこに行くのかは
もう大事なことではありません

マーくんは
マーちゃんの二の腕にかみつき
マーちゃんは
持っていたボールを投げつけ
唇をかみ締めました

傷つけあう別れは
潔いさようならと同じくらい
優しい作業です

砂場に落ちたボールが
夕暮れの中どこに転がっていったのか
もはや私に知るよしもありません


自由詩 おわりは始まり Copyright りょう 2010-01-02 09:46:35
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