この冬最初に雪を見たのは新年だった
あ。

握り締めることなんて出来ないってわかってるのに
風に翻弄されて舞い落ちる粉雪をつかまえて
その結晶を手のひらに刻み付けたいと思った


この冬最初に降る雪を見たのは
帰省先である少し北の街だった
坂をのぼるわたしの吐息は白く柔らかく広がり
かさかさの頬は薄い紅色をしていた


普段はひっそりと静まり返った墓地は
各々が艶やかな花で飾りつけられており
温度を持たぬ灰色の石は舞う雪を重ね
そろそろと結晶の形をいびつに溶かしてゆく


ただひたすらに優しかった眠る祖父よ
わたしと瓜二つの顔だった眠る祖母よ
最後に一緒に歩いたのはこんな日だった
今は潰れた近くの小さな商店で
普段余り食べることがない少し高いお菓子を
子どもらしく駄々をこねて買ってもらった
お正月のささやかな贅沢だった



手を合わせる爪の先に雪は止まり溶ける
供えた南天の実を包むように
羽織った黒いコートの色を流すように
とめどなく空から降り落ちてくる


合わせていた手をそっと離すと
まるで待ち構えていたかのように
ひとひらの結晶が滑り込み
手のひらに刻み込むことは勿論なく
すぐに水滴になって消えた


自由詩 この冬最初に雪を見たのは新年だった Copyright あ。 2010-01-01 22:10:09
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