石黒

活けられた
あしも茎も
垂線のむこう
まなざしに分かたれ
きめ細かで
しべも口もまだ
ざらついていた
肌に
注がれ
開かれてゆくところ
注がれては
省みることを忘れた
めも鼻もまだ
活けられたところ
ひとたびと無く
ここに
戻っては
ここに語られる
出生の秘密も
はじめから
語られていた
こうのとりに
運ばれるよりも先に
明かされていたことも
その明るさのかなた
流産した声や
綴られなかった
文字も
ここに語られる
生い立ちのかなたに
活けられては
そこここで
静かだったのも
笑うこと
句読点を打っては
駆けてゆく
馬の顔が
忘れられなかったこと
暦もまだ
古く
絶え間ない
しゃべり声に
満ちていたころ
忘れられなかったのも
まだ幼く
鳥の顔と
馬の顔の区別もつかなかった
ここに語られる
活けられた
あしも茎も


自由詩 Copyright 石黒 2009-12-31 15:45:23
notebook Home 戻る  過去 未来