お粗末なレイトショー
ゆびのおと

あてどなく 
夜の汽車に乗っていた

かすかな
灯りの
輪っかの中を
はずれ
はいり
はずれ
はいり

気がつくと
小さな駅の
小さな映画館の
小さなスクリーンの
レイトショー

ギシギシの椅子に座った時は
始まったばかりだと思ったのに。

いつのまに 本編が終ってしまっていたのか

気付かなかった

空っぽのスクリーンの上に
さっきまで色鮮やかに見えていた
はずだった
物語は

ただの布きれだった

人は
時に
見るべきものではなく
見たいものを
見てしまう

とは
よくいったもの

見たかったのは
誰?
見せたかったのは
誰?

逃走の足取り軽やかに
音もたてず
黒猫は屋根の上を駆ける
三日月めざし
甘やかな鳴き声
プラケースに閉じ込めたまま























自由詩 お粗末なレイトショー Copyright ゆびのおと 2009-12-31 02:13:20
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