星の授業
佐野権太

このように銀河は白く
星が密集して見えるわけですが
隣り合う星どうしでも
何光年という隔たりがあって
異なる時間と空間から出発した光が
一斉に辿り着いた
奇跡的な現象なのです

例えばあの
献身的で仲のよい
ふたごの星も
オリオンの
勇敢なベルトも
こぐまを慕って巡る
母熊のシッポも
それぞれの内側に
広大な暗やみを抱えているのです

さあ
目をつむって
星を聴きましょう

私たちの
意識、と呼ばれる宇宙も
遥かな奥行きと
広がりのなかに
回転しています

ぼんやりと浮遊する
ミルクの明滅
あるいは
尖った硝子片のような
スペクトル
それらはみな
孵化するための鼓動であり
思いを遂げようとする
意思なのです

さあ
目をひらいて
もう一度深く星を吸ったら
きょうはもう、おしまいです

惹かれ合う“連星”や
銀河座標の外側のお話は
また今度することにしましょう

 
 
 
 
 


自由詩 星の授業 Copyright 佐野権太 2009-12-29 01:07:21
notebook Home