インド旅行記10(バラナシ)
チカモチ

パプーにお願いして安いシルクの店を紹介してもらい、白地のワンピースをひとつ作ってもらうことにしました。先日買った青いスカーフと合わせて着られる服がどうしても欲しくなったのです。パプーはすぐに連れて行ってくれました。

連れて行かれたお店にはやさしそうなおじいさんがおり、イメージ通りの生地をすぐに出してくれました。ワンピース1枚分でしめて4000円。
生地を売る店ではオーダーメイドは扱っていないらしく、別のお店で作ってもらうことになりました。簡単に採寸し、首周りや袖ぐり、膝丈などのイメージを伝えて終了。明日の午前中には仕上げてくれるとのことでした。楽しみ楽しみ。

午後はずっとガンジス川のほとりで本を読んでいました。だいたいこの町はそれほど際立った観光名所はなかったし、そろそろ中だるみの時期にさしかかっていました。ガンジス川には入れ替わり様々な人が沐浴し、汚いな川で体を洗い清めていました。

宿に戻るとパプーが声をかけてきました。
「彼女たち、屋上で凧をあげているよ。よかったら一緒にどう?」
そういえばインドの各地で凧をよく見かけました。
ううん、悪くはないけどちょっと疲れているし、凧っていうテンションじゃないな…。
あんまり気が乗らなかったのでパプーには気が向いたら行くと伝え、部屋に戻って本の続きを読んでました。

しばらくたつと部屋の外で花火があがる音が聞こえてきました。フェスティバルだからでしょうか?
屋上上がってみようかな、どうしようかな、と迷いながらも活字を追い続けること数十分。突然、誰かが部屋のドアをノックしました。
「こんばんは。いますか〜?屋上から花火が見えるんだけど、よかったら一緒に見ませんか〜?」
ドアをあけると姉妹の姉が立っていました。わざわざ呼びに来てくれるとは、なんてやさしいのでしょう!

屋上にあがると姉妹とパプーが椅子にこしかけて花火を見ていました。フェスティバルの日は各家庭が屋上から花火をあげるみたいです。あちこちであがっている打ち上げ花火はけっこう本格的で、職人さんがあげているそれのようでした。

30分くらいすると、ようやく花火のラッシュもおさまりました。丁度夕飯の頃合だったので、姉妹と屋上にあるレストランに行きました。
が、コックがもう帰ってしまったとのこと。パプーは「自分でよければ何か作る」と言い出しました。さらにそれを聞いた姉妹の妹は「私が何か作る」と言い出しました。かくして我々はぞろぞろと厨房へ行き、調理の様子を見物することになりました。

姉妹の妹曰く「オムライスを食べたいんだけど、インド人が作る卵はパサパサしてて不味い。だから卵の部分は私に作らせてほしい」とのこと。それとは別に味付けにも不服があるらしく、野菜とご飯を炒めて調味料をからめようとするパプーに対し、あまり濃い味にしないよう、しきりに注意していました。
約束通り、卵の部分は妹が作りました。生卵を溶き、牛乳を入れて生地を作る彼女を不思議そうに見守るインド人たち。「これがジャパニーズスタイルのオムライスか」と珍しそうにつぶやいていました。

私は何でもいいと言うと、パプーはカレーを作ってくれました。インド人の調理の様子をじっくり見るのは初めてでしたから、面白くて仕方ありませんでした。まずマサラを作り、野菜をからめて炒め、しんなりしてきたら水を入れて煮込む。後からじゃがいもを入れてさらに煮込む。
途中、味見させてもらったのですが何となく物足りなかったので、スパイスを追加してもらうようお願いしました。「そうなんだ…」とパプーはなぜか嬉しそうにしていました。

作ってもらったカレーはとても辛く、とても美味しかったです。姉妹たちもふんわりとしたオムライスに満足そうでした。
その後、2時間くらいおしゃべりして部屋に戻りました。たった二晩だったけど、屈託ない彼女たちと過ごした時間は、数少ない明るい思い出のひとつとして心に残っています。


散文(批評随筆小説等) インド旅行記10(バラナシ) Copyright チカモチ 2009-12-29 01:01:59
notebook Home 戻る  過去 未来