パナマの肉
瓜田タカヤ

パナマの肉

すぐに明らかに刑務所からこぼれ落ちた慟哭は
君の優しい気持ちなど汲まず
鈍重な赤土を砂塵が痴漢の性欲まま蹂躙し
熱波の源まで絡げ運ばれゆく

通り過ぎる汗のタンクトップを張り付けた女が
唇でタバコを一本儚くくわえ
過去を何度も再考し欲望に過敏で
発狂を何度も思い描き煙が漏れるのみ

女の尻肉が暴力を連想させ
屋台に大量に並んだべと付く
アルコールボトルの精神の
ニビ色を誇張し
過剰な心臓の弁を
紙細工に代え
臓器が皮膚で
乾燥した外皮が内側だと
取り違える

画期的な死はエンターテイメント性に優れ
油圧で死ぬことも滑らかで精細な光を発し
意味がある気がしておののく

有頭エビは背わたをとり
足は鋏で切る
鳥は腹の中を流水で洗い
皮にフォークで穴をあける
蠅はリボンに張り付き
バイブレイターのような低音を鳴らす

産卵の圧力で
女がどこかへ移動するのを追う
乱雑な線が何十本も引かれ
場所と脳髄を合成するが
徐々に油膜が染みいるだけで
幼児の手遊びに背筋も凍る

欲望だけをつよく抱きしめる
純粋な琥珀色の欲望をだきしめて
首飾りにしてみにつける

知り合いなど元々誰もいない
パイプからあふれる廃液が地面を濡らし
だれも知り合いなどいない
処理場のにごった空中が鶏の肉等を
散らかし吸い込む喘息息が
滑稽な振動背中を振るわす
かじり肉を知る肉汁こぼれ落ちる一滴のこぼれ
太陽の木漏れが女を象りビスケットのにおいで充満する

かけらのみで人をあやめて
でんぐり返る
私たちは同時に跳躍できぬ
だけの一つの肉


自由詩 パナマの肉 Copyright 瓜田タカヤ 2009-12-29 00:24:04
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