【140字小説】青猫他
三州生桑

【青猫】
夜がふらりとやって来た。ポケットに一杯の子猫をつめ込んで。「どいつもこいつも元気だぜ。安くしとくよ!」小さな青猫を手に載せてみる。三百円だと夜は言った。「青猫はいい匂ひがするよ」さう言ふと、夜はふらりと帰って行った。手のひらの上で青猫があくびをすると、ほんのりと薄荷の香りがした。


【一年ひと昔】
年末年始はツイッター三昧かな。去年は何をしてたっけ。ツイッターの存在すら知らなかった。十年ひと昔とは言ふけれど、ネットの流行り物なんて一年ひと昔だ。光陰矢の如し。今年バージンだった娘が、年が明ければ援交し始める。よくある話。行く川の流れは絶えずして…。「ねえ三万円よ」「はいはい」


【ホームレス】
歯が全て抜けてゐて聞き取りにくかった。「帰りたい? どこに?」東京から金沢まで帰るのに五百円欲しいって? 今日はクリスマスだ。私は硬貨を一枚渡す。五百円で買った嘘。すると老人は「せ、せ、千円…」と言って雨に濡れた手をまた差し出した。強烈な異臭。金沢っていい所なんだらうね、爺さん。


【クリスマスケーキ】
近所のパン屋でクリスマスケーキを買った。クリスマスが終はってから。「ああもう持ってってくれよ。三百円でいいよ」クリスマスにケーキを食べなきゃいけないなんて一体誰が決めたんだらうね…てなことを猫のクロにボヤいてみる。クロはケーキの匂ひをちょっと嗅いで外へ出て行った。…いただきます。




■三州生桑 140字小説Twitter■
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散文(批評随筆小説等) 【140字小説】青猫他 Copyright 三州生桑 2009-12-28 21:29:23
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