黙示録からのラブソング
りょう

各村の長が
たいまつを掲げ
占い婆の元に
かけつけた
ときがきたのだが
口を開いたのは
一刻たってからだった

   これから起こることを
   聞いてくれるね
   みんなも
   気づいてるだろうから

月のない夜だった

   この地の下
   岩も溶ける
   灼熱の泥深くに
   胎児が眠っている
   この地が
   できるときからずっと

   寝る子は育つ
   何度も続く地揺れのあと
   その子はうぶ声とともに
   陸から右手を
   海から左手を突き出し
   空の裂け目から
   大いなる光を引きこむ
   宇宙に風が吹き荒れた後
   子供は抱きかかえられるように
   空の外に消える

   この地は
   火の海と
   黒い太陽が支配し
   その先は
   私にも分からない

   いいかい
   これから
   光に迎えられる者
   吹き飛ばされる者
   地に残される者が出てくる
   残される者に言うよ
   いかなるときと同じように
   命をつないどくれ
   つなげば先ができる

   いいかい
   これは幸でも不幸でもなく
   生まれるものは
   抱かれるという
   命の摂理なんだ
   だから
   互いに抱き合い
   つないどくれ
   分かってくれるね

話し終わると
一回目の地揺れが起きた
遠くで何かが
吠え立てていたが
月はやはりなかった


自由詩 黙示録からのラブソング Copyright りょう 2009-12-28 09:01:00
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