夏のデルマトーム
CAMILLE

スタイルを気にして愛がはじまる
臭い朝。
臭いのは口の方だが
素麺が背からにゅると伸びる
それを遠方から見ている俺
初夏のシーサイドでさみしいかなしい

「例えばきついGパンを履いたときとか足が痛くなるやろ」
意味不明のことをほざきながら
顔に絆創膏を貼ったオッサンが迫り来る
体全体がけだるいもう一度時間を巻き戻せたら

葱を刻むように時を刻む
所詮はx軸上の出来事
オッサンがガリガリ君を食っている
楽しげなface
空が銀色に見えるのだ
「もう堪忍してくれへんか?」

夏が近づく
心のデルマトームに霞がかかる
今は月の晩
あの日と同じ月の晩です

ふと見渡せば
動物園の夕
未だありもしない部位を捜すオッサン
それが少しだけオーバーラップするさみしいよ

夏が近づく
記憶の一瞬は
どいつもこいつも液晶の表面で褪せた微笑みに変わっていく

「もう一年ですか」
意味もなく話しかけると
作業中のオッサンは手を止めてニッと笑った

今は月の晩
あの日と同じ月の晩です


自由詩 夏のデルマトーム Copyright CAMILLE 2009-12-27 16:52:14
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