彷徨ー黄褐色の月−
……とある蛙

大きな夕日の線状に放射される
赤い光線の先に
黒いシルエットに変わるまばらな家並みが
山並みにより既に陰っている
表面のうねっている畑の中にあった。

その中を疾走する人影一つ
帰るのではなく出立の影
日没がこの人影の仕事始め
朱色のグラディエーションが次第に
群青色に変わり
白い帯の上に星が瞬き
黄褐色の月が東の空に浮かぶころ
人影は闇に融け込み、凶暴な空気を作り出す。

夜が

夜が悲しいのは
その暗い色が
死の誘惑を含んだ色であるからか

夜が寂しいのは
その暗い色が
風景を人影を隠蔽してしまうからか

夜が静かなのは
その暗い色が
あらゆる音を吸い込んでしまうからか

それでも鈍く輝く黄褐色の月
その下で彷徨する黒い人影一つ
獲物を求める人影が一つ。
夜明けまで 遠い道程があるのみで

空には黒く変色した月
黒い光線が降り注ぐ大地に
血に飢えた人影が一つ。
決して声を上げない人影が一つ。






自由詩 彷徨ー黄褐色の月− Copyright ……とある蛙 2009-12-26 21:01:10
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