ソウルシンガーに託す
真島正人

夜はもう星を睨まない

素晴らしい調和が
海のようにやってきて
空と地上とが
反転する

ここで重力が
反対になり
私たちは
みんな振り落とされるだろう

黒い宇宙が
波打つ海となり
新しい生命が
息吹をあげる

薬指から徐々に形成
される
人に似たものども
毛の生えた植物群

砂漠はまだ
侵食しない
だが開かれた構築物のその原初においては
禁忌が正確に
成立する

入り込むべきでない地所が
声によってたたえあげられる
そして時の流れという名前の予定

高い、背の高い建築物が
やがては禁忌を犯し、揺り動かし、その意味を消し去り
今を見つめなおす

その頃私たちは依然として
あのかつて黒々とした波を穏やかにさせながら
だがライオンのオスの鬣のように
記憶をすべて失って
漂っている



自由詩 ソウルシンガーに託す Copyright 真島正人 2009-12-26 07:28:12
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