逢魔ヶ刻
西天 龍

とんがり帽子の雲が
隊列を組んで流れていく
間もなく夕暮れらしく
どの雲も右半分がオレンジに染まっている

地平までは一本の道が続いているだけで
街どころか木一本生えていない
雲が動いているのに
風はそよとも吹かず
真空の黄昏が広がっている

僕はここがどこか知っているけれど
誰にも教えたくない
僕は多分君のことを愛しているのだろうけれど
誰にもそれを気付かれたくない

黄昏の静寂、雲の隊列を見上げる
のっぺりした平野に一人立ち
地平から歩みくるものを待っている
それがいつ来るのか
あるいはすでに後ろに立っているのか
僕には分からないけれど
それを、じっと待っている


自由詩 逢魔ヶ刻 Copyright 西天 龍 2009-12-24 01:34:55
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