壊される人形の復活劇 ある会社員より愛を込めて
りょう

家に帰っても会社員の彼は
パソコンを叩きながら
テレビを見ていた

番組では
「本邦初公開
 自分を捜しまわる日本人形」と
画面の端に銘うってあった

スタジオに
日本人形の入ったオリが運ばれた
それは隅で体育座りし
ヒザに顔をうずめていた

ある男は
いきなり人形の腕をもぎとり
反対の隅に置いた
人形ははいずりながら腕をとり
自分にとりつけた

次に男は
両手両足と首をもぎ
バラバラに置いた
各部分はつながろうと
もがき合った

すると会社員の彼の耳に
飛行機雲のような叫びが聞こえた
聞こえないからといって
ないとは限らない声
会社員は画面をなぐり
テレビにすがって泣いた

生きようとするものの
邪魔をするな と

後日談
命をもった物を守る
命有物保護団体を設立したとして
元会社員の彼は
テレビの画面に映った


自由詩 壊される人形の復活劇 ある会社員より愛を込めて Copyright りょう 2009-12-23 17:40:38
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