かげがとても美しいので
相良ゆう

ものがたりが美しすぎて



まっすぐに見つめていたら

わたしにはそれ以外
見えるものがなくなってしまった





そんなときに
ふと後ろをふりかえる
できごとがおこって


いままで見たことのなかった

いまにも消えそうなうすい



かげをはじめてみた




いつもわたしに
ついてきていたのだろうか


めをこらして
もっとよく見ようとするけれど
つかみどころがなく
はあくできない


だからわたしは
ものがたりの美しさには
かなわないはずよと
目をそむけた





そんなある日
おなじものがたりを読む
なかまに出会った


きみのかげは
ずいぶんうすいんだね


わたしは
かれと
ものがたりの話ができる
そうおもって心おどらせていた
それなのに


きみのかげは
ずいぶんうすいんだね


わたしは
かれと
ともだちになれる
そうおもって

それなのに


でも
かれの言うとおり
わたしのかげは
とてもうすくて



ぼくのかげと
あわせてみよう





うん















それからわたしは
ものがたりのページを
しずかにとじた

かげがとても美しいので


自由詩 かげがとても美しいので Copyright 相良ゆう 2009-12-22 02:43:23
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