もしも、あなたが
ダメな人間なのだとしたら
どこがどうダメなのか
問題はそこにあるのではなく
あなたという人間の総体がダメなのであって
また、そんなあなたを含んだこの人類すべてが
ダメなのであるということに
他ならない

あなたがダメな人間になったのは
去年の九月のことではないでしょう
生まれて間もない
仔犬の
赤ちゃんの
そのふわふわを思うといても
たってもいられないという
あなたの
そのダメさ加減をひと煮立ち
塩加減の
茹で加減の
いい加減なあなたの
その加減の蔭で影を潜める手前勝手な
炊事場の
水道蛇口をひとひねり
今夜も雪が降るでしょう
あなたは来ない
それでも囲炉裏は
ちんちろりん
蒟蒻の
それでいて床上手な
あなたのそれは
水溜りも踏めないくらいの
やさしい
意気地なし

あなたがダメな人間になったのは
なにもあなたひとりのせいではなくて
だからこそあなたひとりが抱え込まなくてはならないほどの
責任と自由と性的濫用と国家権力的殺戮と
環境破壊的選択肢の枯渇と
私的告白と
懊悩と
性病蔓延型資本主義的性格判断星占いと
ホイップクリームの誘惑と
謎と
うどんと
冤罪製造マニュファクチュア乃至四角い部屋の幼稚なマジックと
自白と
自白と
自白の果てに
あなたがた人間がまだ人間であり且つ
人間ですらなかった時代の地平線を眺めて
そこに沈む夕陽を見つめて
汁気がなくなるまで煮詰めて
落し蓋で人差し指をやけどして
そんな粗忽な自分に涙して
そのキッチンにくずおれて
涙の海に
海原に
進化という名の風、渡る
「俺はいつでもそんなことを
考えているんだぜ」
だからあなたはダメな人間になったのではなくて
人間がダメになった
あの
電脳洗脳電子箱的白色世界
「せんせいてんのーへーかのまごとこーえんであそびました」的世界
つじつま

もしも、あなたが
ダメな人間になったとしたならば
ダメな自分を
ダメな湖の
ダメな湖畔の
ダメでおしゃれなコテージで
ダメでかわいい仔犬を抱いて
ダメで白くて甘くて高価なスイーツをほじくって
ダメで香りよくてあたたくてダージリンな紅茶をすすって
ダメで白鳥もどきのアヒル型足漕ぎボートがゆっくりとゆっくりと沈没しつつあるを眺めて
ダメでもともとな宝くじ的おてんとさまがあの山の向こうに沈むまで

もしも、あなたが
ダメな人間になるために
ダメな人間の条件をこなして
やっとの思いでダメな人間になったとしても
それをどうやって証明できるのか
そんなもの図るものさしなんてあるのか
どうせ、そうやって
自分だけ助かろうと思うクダラナイ奴らのつくった
架空のシステム