やまとたける
……とある蛙


ヲウスの心は壊れてゆく
白鳥になんてなりもせず
国から父から捨てられて
峠の大きな大きな木の下で
故郷を想い死んで逝く

ヲウスよヲウス

父の嫉妬に兄殺し、
それを父に疎まれて
母と別れて幾歳月
行くつく先は片歌の
寂しい寂しい田舎道

ヲウスよヲウス

大和は国のまほろばだったか?
大和しうるわし といえるのか?
子供の時から転戦し、
流刑と変わらぬそのさだめ
大和はおまえに何をした。

ヲウスよヲウス

相武の果ての走水
荒ぶる海は誰の呪いか
騙しの果てに朽ち果てた
イヅモタケルかクマソタケルか
他人の油断を計略(はかりごと)
自分の油断は騙し討ち
しかも、出雲の王者には
物笑いの歌まで献上し

ヲウスよヲウス

そのまま鈴鹿の野辺の土
なればさぞかし安心と
思うていたが 嘘書かれ
何にゆえ白鳥で飛翔する
それでも大和に降りきれず
河内の国まで行き過ぎる。
それからやはり飛翔して
いずくとも無く飛び去った。く

ヲウスよヲウス

報いをそのまま受けるのか
それとも父を道連れに
十四代で途切れるか
応神 継体 だれのこと
父とは とんと縁がない

ヲウスよヲウス

おまえは何のために戦ったのか
おまえは何を守りたかったのか
おまえは何を欲しかったのか
おまえは何処に帰りたいのか
おまえは何をしたいのか
おまえは誰に会いたいのか

ヲウスよヲウス
それでも
大和は国のまほろば か
大和しうるわし といえるのか。


自由詩 やまとたける Copyright ……とある蛙 2009-12-20 21:39:54
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