満月に吠える
乱太郎

「満月に吠える」

夜中眠りに就いて初めて裸を曝す
歪んだ時系列を跳ね跳び
活きた清涼水を次から次へと浴びる
そして吠える
自分の闇に悲しく浮かぶ
黄色い満月に



「手紙」

頬笑み返しの月下美人
忘れかけた友情を取りもどし
また別々の旅支度を始める
出会いがしらを密かに企んで



「夜」

闇夜と言わず
包まれる光りの静けさと
恐れ浚われるのでなく
明日への恥じらいの影と

星座となった女の子宮から
また太陽が産声を上げる



 「瞑想」

無限の淵へ誘うかのように
黒い沈黙の小舟が
閉じた瞳の向こう岸を流れていく

色彩が片目開けたら
永遠が俯いてしまった



 「文語体」

文語体の彼女は
橋の欄干に手を置き
眼鏡越しのそのふたつの光る眼で
流されている屍をひたすら凝視していた
文法は溜息に掻き消され
川底に沈んでいく


自由詩 満月に吠える Copyright 乱太郎 2009-12-20 18:08:47
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