アマリリス
月乃助

眠たさを誘う 五月の街
Market Street 1200
サンザシの木がほこらしげに 赤い花を咲かせていました
通りを染めるほど 目に映えるほどに
歩きながら目にできる家々の
フラワー・ベッドは、どれも
花の香りにうもれて、

    【May flower】
      
陽の光があふれるばかり
神々しいほどに 手をかざすほどの 春でした
かわいた、優しい風が四つ角に生まれて
人の心を慈しみ つつんだりしたのは、

      ・
どこへいったのですか
葉の落ちた枝は今 一つ残らず皺だらけで、
ほんの少しの赤い実が、鳥に許しをこうほどに
枝に身をよせる
さびしさばかりが、ふりまかれ

      ・
おかえりなさい、
帰る場所はちゃんとあるのに、

   【spring dream】     

春の夢をみたくなっただけなのですから、
大事に箱につめては
ベッドの下に押し込んでおいたのに なにも残っていないなんて
そこからは、いま
朽ち葉のすえたにおいさえも してくる

      ・
肌恋しい
冬の夜に
咲くアマリリスの花 一りんがあってくれたら、

   【Amaryllis scent】
      
黒く投げ捨てられた寒い夜を 春の想いは
男のにおいに似た 身の
それに抱きしめられたような気がするのです
その腕の中で眠ることを願いながら
毛布のなかに入れてやって、

      ・
次の雪が舞い落ちてくる前に
早く眠りにつかなければ、
花をなくしたと、問い詰められた冬の
代わりに、春を想い出すのも
今宵は、よいのかもしれない

      ・
あたたかな毛布のなかで
その時は、
あたしが、あたしにもどれそうで、

それって、うれしいのです






自由詩 アマリリス Copyright 月乃助 2009-12-20 13:42:13
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