ランドセル
森の猫

娘は先生を伴い玄関の前に立っていた

「おかあさん、申し訳ございません」

担任は、開口一番こう言った

娘のランドセルに油性マジックで
”死ね!土屋”と

でかでかと、いくつも書かれていたらしい

でも、見せられたランドセルは
もう、キレイに拭き取られていて
その 忌まわしい文字は
うっすらと認識できただけだった

土屋さんが委員会活動の間に
教室でイタズラされたらしいです

こちらは、ありがとうございました
しか、もう言いようがない

なんだか、有無を言わせぬ威圧感があった

・・・・

娘は気丈にも 翌朝その消された
ランドセルで登校し
欠席しなかった

クラスの女子の一団に
いじめられているとは
薄々知っていた

二クラスしかない
隣のクラスでも
ある男子生徒とひとりの女子が
いじめの対象になっていた

数日後
その男子のおかあさんから
連絡があり 
ファミレスで落ち合った

お互いの子供たちの
いじめの情報を話しあう

男子生徒はうわばきに
やはり
油性マジックでの落書き
消せない紋章

他にも
移動授業時に
仲間はずれにするなど

陰湿な小意地悪は続いた

クラスでは
いじめを問う措置として
子供たち全員にアンケートをとった

その結果は・・・

我がクラスでは
いじめはありません
そういう事実はアンケートからは
見られませんでした

そう担任から
告げられた

唖然とした

また うわばきに石をいられたりと
明らかに 集団で行っている
いじめは続いていた

だれも 目撃者のいない
いじめ

それは
先生まで届かないため

学校側は ないとした

平和な学校
仲のよいクラス

という体裁

わたしには
見えなかった
はずの
娘のランドセルに
書かれた文字がよみがえる

”死ね!土屋!”


自由詩 ランドセル Copyright 森の猫 2009-12-18 05:00:12
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