夢に流す
あぐり




懐柔されていく日々に
きみはわたしをどう見るだろうか
転がり続けていた二足の靴が
もう誰の影も踏めなくなって
それからきみは諦めようと何度も手を洗っている
いわゆるともだちのわたしたちに
ありがちなきみの恋愛感情が混じり合うことはないわけで
隣でわたしも水を汲み
その水でわたしは色をつけ
いつまでたっても手を洗い続けているきみを本当は抱き締めたかったが
何も言えずただ描いている

夕暮れにわたしたちの靴は焼かれたから
裸足で帰ろうかとわたしから言い
細い指を掴もうとしたところで
今、もう覚めてしまうんじゃないか
夢なんじゃないか
廊下を這っている赤い光があんまりに透き通っていたから
やっぱりきみとは
夢なんじゃないかと思う


多少は人並みに眠れるようになったわたしをきみは多分蔑むんだ
(もう忘れたの忘れたの
きみはわたしを忘れたの)
そうずっと夢の中で呟くきみはわたしよりも細くなってしまっていて
許さないことも言えずにやっぱり
両手をいっしんに洗っている

((ゆびのあいだを
てのひらをこうをなによりてくびを
つめをゆびをなによりてくびを
洗い続けて洗い続けて
白く白くなったきみをわたしはそれだからうつくしいよって泣きたくなるんだ))

夜中にいつも鳴る時計の針は
きみの孤独を知らせてくれる
何時何分何秒
いつだって覚えているきみの横顔を
瞬きながら描いている
振り返るきみの手首を見て
わたしをずっと許すな
わたしをずっと許すな
呟く言葉は
毎晩一文字も変わらない





自由詩 夢に流す Copyright あぐり 2009-12-17 23:25:53
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