冬と鏡
木立 悟






水紋を囲む風紋に
午後の陽紋は打ち寄せる
灰の路地をさらう羽
刺しては刺され 路につもる羽


砂と氷を指で梳き
髪とうなじを確かめている
ざらざらとかき分け
埋もれたものを確かめている


箱のなかから
万華鏡があふれ出て
どこまで
どこまでころがってゆくのか


瞳は瞳に操られ
おまえはおまえに操られるなら
夕暮れにうなづくのは誰なのか
境いめの失い境いめへの礼


闇のほうを向く
ただ闇のほうを向く
冬の蜘蛛のため
ただ冬の蜘蛛のため


ざらざらと鳴る原
冬の底から
指の夜へ 指の夜へと
招きつづける腺のふちどり


暗がりに灯る暗がりへ
仮の穂の波さざめいて
重なりながら透りながら
ひとつの花を包んでいる


姿もなく影もなく
かたちだけが歩きつづけて
仄かな動きにふちどられたまま
鏡の路へ去ってゆく

















自由詩 冬と鏡 Copyright 木立 悟 2009-12-17 17:45:34
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