見かけ倒し
中原 那由多

騙された方がきっと馬鹿なのだろう

色褪せてゆく写真をいつまでも握り締め
捨てる機会を伺っていた
自発的な行動が出来ないまま
差し伸べられた救いの手にすがり付くも

それは青白く冷たいレプリカ

思わず手離したその時に
ようやく素直に向き合えた


時間をかけて糸を紡いでみても
切れてしまうのは一瞬の出来事
完成形よりも、むしろその過程で満たされていたせいなのか
結末を無表情で見届けていた


安い笑顔に揺れ動いたのは
以前、逃亡者だった名残らしい
沼地を十分ほどうろついて
遂に何一つ拾うことはなく
来た道を引き返すことにした


雑音が取り除かれた箱の中では
見えなくなったはずの星が輝いていて
味気無くも純粋なカタチを取り戻しつつある

机の上の白い花は
北風にさらされてしまい
黒く小さな斑点が踊り出そうとしている




自由詩 見かけ倒し Copyright 中原 那由多 2009-12-15 20:53:20
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