冬と咆哮
木立 悟






昼の終わり
脚の痛み
毒を盛られ
曇の十字


まぶた くちびる
閉じかけたまま
文字も色も火も
越えてゆく日々


生まれたばかりの
あたたかく小さな闇を呑み
ひかり飛ぶもの飛ばぬもの
ひろげた腕につきささり
やがて静かに消えるもの


水たまりの奥から
空につながる
夜へゆく坂
逆光の路


木々のはざまが
光の指に煙に昇り
ふたたび花にまなざしに降る
まばたきのたびまばたきのたび
すべてに蒼を帯びながら


硝子のむこう硝子のむこう
ふたつに割れた家のむこう
見えない埃に塵にまみれ
水を持ち上げる光がある


ゆうるりとゆうるりと色なぞる声
水に生まれ
水に立つ花
すべての滴に霧を映して


冬の上を 冬のうしろを燃やすもの
けだもの けだもの
この世ならぬこの世から
この世ならざるものより到く




















自由詩 冬と咆哮 Copyright 木立 悟 2009-12-12 15:37:33
notebook Home 戻る