ピアニシモ
佐野権太
十二月の
さみしい水の底から
きみのささやきに
耳を澄ませる
ふるえる感情の
ひとつ ひとしずく
その波紋
その不自由
どうして人は
急ぐのだろうね
日時計の影が
伸び縮む曖昧さで
きみを抱きしめていたい
というのに
あの頃
無垢に笑ったね
光の言葉は
ぼくたちのもので
緑の風を
くるくる回して遊んだ
何かを取り戻すために
戦っているのだろうか
ぼくら
ひとりも救えないまま
また いちにちが終わるよ
叶うなら
せめて
金色のちいさな泡を揺らす
おだやかな波が届きますように
遥かなきみの
眠りの中へ