10年代へ
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僕らはまた戦争に負けた
いつまでも生きていられると思っているのかい?
君は拒み続ける
でも僕はあきらめないよ
だって時間は過ぎ去っていくんだもの

僕は忘れる
大事なことを忘れる
昨日の夕食も
母の誕生日も
甥の年齢も今日の曜日も
覚えていない

生きていくために
手の甲には
メモがいっぱい

世界を経路積分すれば
総体はちっぽけな一円玉に過ぎないのか?

昼、よどみない昼休み
僕は怖かった
コンクリートのベランダが
崩れ落ちるのではないかと
教室から出ることもできずに

下ばっかり見つめて
石を探している
惹かれるような石を
呼んでいる石を

心が軋む音が
マイマイの殻の奥から
聞こえてくる

さよなら急性期
よろしく慢性期

たった一人の英雄などいらない
僕らは行くよ
つながって つながって

誰かが立てた風車が
カリラカリラと回っている
丸っこい音楽が
頭を撫でる
水平線


自由詩 10年代へ Copyright within 2009-12-11 15:52:54
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